立野真琴インタビュー -3-
【プロフィール】
 立野真琴、本名。富山県出身。血液型は、たぶんA型。星座はおひつじ座。『ガラスの仮面』の美内すずえのアシスタントを経て、『花とゆめ』の『ゆられてたまごBoys(白泉社)』で少女マンガ家デビュー。今年、マンガ家歴二十周年を迎える。



原体験ここに

―― 一番、最初に読まれた少年愛ものは?
立野:たぶん、『トーマの心臓』だった気がします。小学生の頃ですね。でも、そのころは、雑多に読んでいるので、『エロイカより愛をこめて』の可能性もあるんです。そういう世界もあるのか、と。
―― 衝撃を受けましたか?
立野:いや、最初は理解ができないですよ。でも、なんか好きかも、と(笑)。ここが興味のない人と違うんでしょうね。 あと、これもやはり、小学校ですが、私、TVドラマの『太陽にほえろ!』がすごく好きなんですけど、あれにとんでもない回があるんですよ。 小野寺昭がやってた、殿下って役の人が、犯人グループに捕まって、麻薬づけにさ
れる回があるんです。薬づけにされてしまった殿下が、幽閉されるんですけど、山さんという刑事に助けられるんですね。山さんは殿下とふたりきりで、部屋に閉じこもって、殿下の薬が抜けるまで一緒にいるといって、苦しむ殿下をはがいじめにしたりするんですよ。それをみて、ちょっとときめきましたね。いい話だなあ、と子供心にも思ったんで、アア、あれが、最初かもしれない。
―― そこが、もしや『青い羊の夢』の拷問シーンにつながってます?(笑)
立野:そこかな、そうかも、『太陽にほえろ!』かも。あとは、『傷だらけの天使』も好きですね。水谷豊と萩原健一。ほんとのことをいえば、マンガで、あのあたりを再現できたら最高なんですけどね。
―― BLに求めてるのは、その部分であると。
立野:そうかもしれない。いきすぎた男同士の友情と愛情みたいなのがいい(笑)。見たことないです? 『傷だらけの天使』。
―― ストーリーを教えてください。
立野:いや、ラストは、すごいですよ。
 毎回毎回、ろくでもない、チンピラのふたり組が、いろいろな事件にかかわって、楽しく暮らしていたのに、最後に、後輩の水谷豊が、風邪であっさり死んじゃうんですよ。たぶん、結局童貞のまま。 萩原健一が、お風呂に泣きながら入れてやって。死んでる水谷豊をですよ。どこからかパクってきた、女の子のヌード写真のボードを、死体と一緒にドラム缶に入れてやって、泣きながら、浜辺に転がして、そのままおきざりにするんです。それで終わりなんです。せつないですよ。すっごく楽しく暮らしてきたふたりだけど、そんな終わり方をするんです。
―― ちょっと吉田秋生さんのマンガ『カリフォルニア物語』に似てません?
立野:近いです。ああいう感じですよね。相棒が死んで、片方がとり残されてしまう。近い雰囲気ですね。
―― 立野さんの原体験を聞いた気がします。



伝説のTVドラマを見よ!

立野:『傷天』は、その後DVDもでてるし、若い世代もみてるんですけど、『太陽にほえろ!』の『殿下の薬づけ』もみてほしい。殿下が、とにかく素敵で、優しいの。
―― 9・1分けの髪形で(笑)。
立野:殿下って、アダナなんですね。スコッチとか、殿下とか、山さんとか、ゴリさんとか、いろんなアダナがあるんですけど。殿下は、基本的に物腰が優雅で、男前役、優男なんです。素敵でしたよ、ホホホ。
―― 『殿下の薬づけ』というタイトルの回があるんですか?
立野:いや、違います。もっといいタイトルがついてたはずなんだけど、覚えてないの。だけど私のタイトルでは、『殿下の薬づけ』(笑)。 けっこう演出も、耽美的な手法をとられているんですよ。道路の下に隠し部屋が作ってあって、その上にマンホールがある。そこに薬が積みあげてあるんです。その隠し部屋に幽閉された殿下は薬ヅケにされて、上を見あげてるんですよ。自分が打たれた薬の紙で、鶴を折って、それをマンホールの穴から投げだすんです。それをみつけた山さんが、鶴を開いてなめて、「あ、薬だ。殿下はこの下にいる」って、彼をみつけだすんです。
―― 原体験は、TVドラマにありき? アニメもTVドラマですし。
立野:そうですね。もう、TV大好きでしたからね。TVばっかり見てたかもしれない。


いきすぎた男の友情に萌え?

―― 『太陽にほえろ!』や、『傷だらけの天使』が好きで、次に『ガンダム』がきて。ちなみに『ガンダム』はどういう組み合わせがお好きなんですか? シャア×アムロ?
立野:シャア×ガルマですよ。アムロなんか違いますよ(笑)。私のなかでは、シャア×ガルマですよ。 でもアニメだったら、ロマンでいうなら、永井豪先生原作の、『UFOロボ グレ
ンダイザー(以下、グレンダイザー)』が素晴らしいです。『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『グレンダイザー』という一連のシリーズがあって、全部に兜甲児君という子がでてくるんですけど、『グレンダイザー』は、兜甲児君が、宇宙人の王子様とめぐりあう話なんですよ(笑)。
―― BLっぽいと。
立野:すごかったですよ。日本名・宇門大介さんという、実は宇宙の王子様であるデュークフリードが、グレンダイザーというロボットに乗って、兜甲児君っていうマジンガーZに乗ってる男の子のサポートについて、牧場で暮らすんです。だけど、宇宙人だってことは周りには黙ってなきゃいけないし。最後はきぬぎぬの別れをすると
いう、素晴らしいドラマです。デュークフリードは「君だけは、死なせはしない」とか口走るんですよ、女の子もいるのに。「君だけは、死なせはしない」と!
―― 『デビルマン』もそうですよね。
立野:『デビルマン』も、すごく好き。永井豪先生には、そういう部分が、ちょっとあると思います。BLファンは必ず、永井豪は読んだほうがいい。
―― じゃあ、立野さんの原体験は、永井豪さんと『太陽にほえろ!』というわけですね。では少女マンガの原点は?
立野:少女マンガは、美内すずえ先生や、一条ゆかり先生とか好きでした。やっぱり大河ドラマが好きでした。
―― 少女マンガでは描けないけど、BLでは描ける設定などはあります?
立野:少なくとも、アクションものは、BLのほうが描けますよ。犯罪がらみとか、ミステリーとか。少女マンガでも、刑事ものを描いたことはあるんですけど、BLのほうが、自由な気がします。
―― 一般的にBLは、相棒同士の話が多いという印象がありますが。
立野:じつは多くないのです。片方が優位に立つ話が、圧倒的に多いですよ。上司と部下とか、先輩と後輩とか。どちらかが優位に立っていて……たいがいそれが受なんですが(笑)……その人を攻略するために、部下や後輩ががんばるという話が多いようです。
―― それが恋によって変わるという(笑)。社会的な地位が、恋愛的な感情によって、逆転していくという(笑)。
立野:とか(笑)。社長が、圧倒的な権力で下をおさえる。でもだいたいその社長が、弱みをみせて、受が優位になるんです。落としにくい人が落とされたほうが、面白いんでしょうね。少女マンガもそうですけど。
 でもじつは私は、年上とか、上司とか、優位な立場の人間が攻の話が好きなんです。
―― 立野さん自身は、優位のまま強引に押し進めていくパターンがお好きということですか?
立野:好きですネ。でも、BLには案外ないんです。ですので、せめて自分だけはこの、優位な人が攻のままのパターンでいきたいと思ったりしてますけど。

次回最終回につづく。


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