葵二葉/紅三葉インタビュー
【作家近況報告】
葵二葉/「テニスの王子様」のミュージカルにハマっていました。いまは…
紅三葉/好きなタイプは、ずっと昔から岸辺一徳。結婚してもいいほどとのこと。
やんちゃ仔ネコとおっとり仔ネコと、ミニチュアだけどとっても大きなダックスフンドと現在熱烈同居中のおふたりです(ほんっとに可愛いのです。写真を見てネ)

(前フリ)
ふたりなのにまるでひとりのよう。お話をうかがっているとそんな感覚に陥ってしまう、まさにあ・うんの域に達したふたり組のマンガ家さん登場です。合作に至ったふたりの出会いから創作の秘密まで、ねほりはほり聞いちゃいました!


合作の秘話
―― ふたりのペンネームの由来を教えて下さい。
紅:ボーイズ以外で、佐野真砂輝&わたなべ京名義でまずデビューしていたんですが、ボーイズのマンガを描くときに、あらたにペンネームを考えたほうがいいんじゃない? という話になりまして。まず最初に葵二葉、という名前があったんですけど。
葵:色や音が対になったり、対照的になるようなものがいいねって。佐野&わたなべのときみたいに統一性がないのもなあ…と。
紅:二葉だから三葉だろう、みたいな(笑)あまり深い意味はないんです。
―― デビューのきっかけは?
葵:同人誌で描いていたシリーズを描いてみませんかと、出版社さんから声をかけていただいて。
紅:で、イヤです…と。
―― 嫌です??
葵:同じものは描きたくないから。それなら舞台設定は同じだけど、違うキャラクターでならやりますといって(笑)できあがったのが。
紅:『プラチナ』です。
―― お話を考えるところからおふたりで作られるのでしょうか?
葵:ふたりのときもあれば、片方が考えるときもあります。でも、だいたいどちらかが考えたほうがまとまりやすいですね。話合いながら考えていくとなかなかまとまらないんですよ(笑)。
紅:趣味趣向が微妙にズレていて。
―― 本筋をどちらかが考えてから、それに肉付けしていくという。
葵&紅:そのほうが多いですね。
葵:たとえば、プロットを紅が書いてきて、それを見てここが足りないんじゃない? 変なんじゃない? という感じで。ちなみに、『花恋』の作品はほとんど紅が考えてます。
―― 主軸が変わると、ならではの個性というか、話に差はでますか?
紅:基本的にはあまり変わらないと思うんですけど……。
葵:えっ、全然違うと思う。たとえば、私はBL系の王道パターンを踏襲しがちなんですが、紅はちょっと冒険する。
―― 紅さんは、アイデアマン?
紅:いや、そういくといいんですけど、ホームラン狙って内野ゴロみたいな…(笑)
―― 意見の相違でもめたりとかは?
葵:そんなのしょっちゅうですよ(笑)。折り合わないときは、編集さんに聞きます。編集さんに聞いてみて、それに従えばいいじゃんって。
―― やはり、忌憚なく意見を述べあうことが鉄則?
葵:お互いに、遠慮が欲しいよねって思うときもあるんですけどね。
紅:歯に衣きせようよって(笑)。
葵:でも他に合作されてる方もそうだと思うんですけど、遠慮してたら続かないな~。


始まりは遠距離から
―― 当然、最初はひとりで描かれていたわけですよね。
葵:もちろん、出会う前もマンガは描いていましたので。
紅:ふたりでデビューしたわけですが、その前に同人誌時代というのがありました。
葵:ただ出会って合作をやってみようか、と始めましてからはずっとふたりで。それで、紅を大阪から呼び寄せまでしたという。
紅:私は大阪出身なんですが、最初の二、三年は、東京大阪間で合作をやっていました。
―― どうやって?
葵&紅:新幹線便です。
紅:何回かやりとりして作品を完成させていましたね。
葵:下書きの段階できて、ペン入れまでしてまた返して。
紅:で、足りないところを描き入れてまた戻して。品名がいつも「原稿」で、送ったらまたすぐ戻ってくるから、顔なじみになっていた新大阪駅の新幹線便のおじちゃんは、私がどこかに投稿していると思ってたみたいで。「また今度もダメやったんか?」って(笑) まだ葵が会社勤めだったので、会社に送りつけるわけですよ。だからよけいにおじちゃんに「ああこいつ、またダメだったんだ」て思われて。しまいには「運転手さん待ってるから、はよ持っておいで」っていわれたり(笑)。


二人の原点
―― どうして、合作してみようと思われたんでしょう?
葵:もう覚えてないですね(笑)。同じドラマが好きだったわけですが、好きなキャラクターが別れていたんです。
紅:むかしむかしね…。たぶん、お互い「私はこのキャラが好きなんだ」「そうか私はこっちが好きだ」「じゃあ一緒に描いてみるか!」くらいのノリだったと思うんですけど。
―― ちなみに、何の同人誌を?
葵&紅:『必殺仕事人シリーズ』です。
―― 誰がお好きだったんですか?
葵:紅は村上弘明さんのやっていた花屋の政さんが好きで、私は京本政樹さんのやっていた、組紐屋の竜さんが好きでした(笑)。
紅:必殺シリーズで腐女子的な遊び方があると知ってキラキラ☆みたいな(笑)。そして当時、必殺パロディ界で、一番輝いていたのが葵だったんです。
―― SFも描いてらっしゃるけれども、あれはどちらの趣味?
紅:単純に「SF」とくくるともう古いかな。SFファンタジーですね。私は子供の頃からSFをわりと読んでいて、そういうのが積み重なって出てくるんだと思います。
―― どういうSFを読まれてましたか?
紅:竹宮恵子さんの『地球へ…』とか。いまアニメでやっていますが。
―― 24年組ですね。萩尾望都さんとか?
紅:萩尾さんは読んでないですね。竹宮恵子さんと少年マンガと海外小説。あとは平井和正さんの『幻魔大戦』。菊地秀行さんのファンでもありました。ああいう、SFともファンタジーともつかないあたりが好きなんですよ。
―― 伝奇SFですね。
紅:そう! 『魔王伝』の最初のあおりが、確か「伝奇SF」だった! 実はふたりで合作しはじめたマンガが、菊地秀行さんの『魔王伝』のパロディなんですよ。
―― 魅力はなんだったのでしょう?
葵:キャラクターの二面性に惹かれましたね。末弥純さんのイラストもすばらしかった。
―― ソノラマ文庫を読んでらっしゃったわけですね。夢枕獏とか菊地秀行とか。天野喜孝さんの絵を見て、うるわしいとか。
紅:あの時代、あの人しかいませんでしたからね。『キマイラ』も『D』も天野さんでしたから。
―― 葵さんは、何をきっかけにマンガを描かれ始めたのでしょう?
葵:学生時代に、『J9』シリーズという系列のアニメがあって。その中の『銀河旋風ブライガー』の同人誌を読んで、面白そうだなと思ったのがきっかけですね。その前は、音楽が好きで、学生時代はずっとバンドをやっていたんです。当時もマンガを読んではいたんですが、自分で描いたり想像したりするのには至らなかった。


好きの積み重ねが“愛”
―― 趣味は?
葵:ふたりともゲームは好きです。あとは、映画を見に行ったり、海外ドラマも好きですね。昔からケーブルTVに入ってて、海外ドラマはブームになる前から見てました。いまドラマに関しては絶対に日本より海外が面白いですね。
―― 一番好きな海外ドラマは?
葵:『サードウォッチ』っていう長期連載のシリーズがあるんです。NYの警察と消防が舞台なんですけど、それが好き。途中で『ER』のキャラクターがでてきたり、9、11事件が絡んできたりと。
―― ノンフィクション風なものに魅力を感じる?
葵:日本のドラマって、感情の描き方が嘘っぽすぎて。お芝居が大げさすぎてリアルじゃない。でも海外のドラマってすごくリアルに作ってあります。感情表現がベタじゃないし、これならありそうと思ってしまいますね。とても自然に見られます。
紅:私たち、群像劇が好きなんですよ。出てくる全員が主役っていう話が好きなの。
―― それが少年マンガ好みに繋がってくるわけですね。
紅:最近は、少女マンガと少年マンガの境目がなくなりましたが、そういうのもいいんですけど、これは少年マンガでしか描けないというものへの憧れはありますね。
―― 『WEST END』で、少年の頭をつぶすシーンが出てくるんですよね。少女マンガではあまりみない…。それもやっぱり、少年マンガや菊地秀行さんの影響が?
紅:あ、菊地さんの影響はあるのかもしれない。
葵:変に綺麗にしたくないというのはありましたね。
紅:いい意味で裏切っていきたい。読者に、そう来るかっ! って思ってもらいたい。ボーイズであんまりそれをすると冒険になっちゃうから、気をつけないといけないなぁとは思うんですけど。
―― 『WEST END』の中には、愛という表現がでてきませんね。そういうところも少女マンガらしからぬ。あえてその言葉は使わなかった?
葵:そうですね。
―― あるいは主人公のトナミが、人間ではないので、愛の感情を理解できないからかな? と勘繰りもしたんですが。
紅:言葉にしちゃうのは簡単じゃないですか。
葵:あのキャラクターは「愛してる」とか、絶対言わないと思います。愛とか、そういう言葉でくくれる感情じゃないし、世界観的にも、「愛してる」って言葉があったらすごく浮いちゃうと思うんですよね。「好き」でとどめておかないと。
 でも確かにわたしたち、「愛してる」って言葉を使わないよね。
紅:「好き」が多い。
―― それはなぜ?
紅:愛って言葉はやっぱり強いんですよね。三十ページかけて描いたものでも、「愛してる」のひとことで終わっちゃうことがあるんですよね。それはつまんない。
葵:「好き」の積み重ねが…。
―― 愛?
紅:そこまでいったら、わかるだろうっ!って。あえて言わなくても、わからせたいんですよね。


互いのキャラに魅かれます

―― 最初から紅さんが攻、葵さんが受と、描きわけは決まっていたんですか?
紅:『魔王伝』の頃からもうそんな感じでしたね。もともと私は攻のキャラが好きだったので。
―― 攻を描かれるときは、受のキャラクターを、可愛いと思いながら、やはりお描きになる?
紅:そうでなきゃ描けませんよ!
―― お互いのキャラクターに憧れてる?
葵:彼女の攻キャラを見ていて、すっごくかっこいいなあとは思いますね。だから、お互いクレームも言い合いますしね。たとえば可愛くない顔をしてたら、この角度変じゃない? とか。顔に感情が入ってないよ、とか。
紅:私は攻キャラを描いてるほうなので、受キャラからみた男のかっこよさって、実はわからないんですよね。また男からみた、男のかっこよさも実際にはわからないですし。 まあ、本当のところ、女の子には男性の気持ちまではわからないわけですよ。みんなそこまで考えて描いているのかな? そんなことはないだろう(笑)。
葵:ボーイズはファンタジーだと思っているので。リアルさを追求してはいないんです。
紅:男性作家さんに、「君たちのやおいシーンはきれいだよね」って言われたことがあるのも、やっぱりファンタジーだからかなと。


腐女子のたしなみ
―― ボーイズに目覚めたきっかけは?
葵:『必殺シリーズ』です。妄想が突如浮かんできて。
―― どういう妄想ですか?
葵:えぇ(照)、覚えてないなあ。 海外ドラマものに、特に多いんですけど、男同士のコンビ! あれなんですよね。
紅:普通に愛しあってるよね(笑)。
―― 相棒ものに興味がある?
紅:ホモ好きの女の子たちはみんなそうじゃないかな? 男ふたりいたら、何か妄想しますよ。
葵:あの人とあの人が仲良かったらうれしいなっていう、そういう発想がボーイズの原点なんだと思います。でも、なぜかその中に自分はいないんですよね。あくまで、観る側。観て、いいなぁとか、すてきだなぁ、おもしろそうだなぁ、っていう。ほんとうに、自分の世界とは、別の世界なんですよ。
紅:そこらへんが、ファンタジーたる所以


メイキング・オブ・ファンタジー
―― 読まれるときにはキャラクターに感情移入されてるんですよね。
葵&紅:そういえば、読むときは。
紅:ここでこうなればいいのに、なんでそうなるの、ううっ、とか。
―― それを、妄想で作りかえると、パロディになるんですね。でも、パロディを描くときには自分は投影しないという。
紅:投影されるとオリジナルになっちゃいますからね。
葵:パロディを描く場合は、なるべくキャラクター像を壊さないように気をつけますね。キャラクターを最大限に利用して描く。
―― それがボーイズの始まりという、自分はあくまで観る立場という。
紅:もっとなかよくなればいいのに、って。このコマの間に絶対何かしてるっていう。
―― ということは、話の中には自分の幸せは投影しない?
葵:しないですね~。マンガを考えてる時点で、自分は全く投影されてないんですね。ひとつの話を描きたい、作品を作りたいっていう観念で考えますから。そこに自分の入る余地はないし、入れようとも思わない。
―― 自分が投影されない? じゃあ、『必殺仕事人』も? キャー? すてき、京本政樹様と結婚したい? ってところから始まったのではないのですね。
葵:とんでもない(笑)。京本さんがやった組紐屋の竜さんや、村上さんがやっていた花屋の政さんがかっこよかったのであって、キャラクターと結婚したいにはならないんですよ。そこまでいっちゃう人が、ドリーム小説を書く人たちで、いかないのがボーイズを描く人たちなんです。
―― 「ぼくはいらない子、必要とされない子」っていうセリフが出てきたり、いま『花恋』で連載されている作品も、借金のかたに売られたり。阻害され傷ついている人間がよく登場しますが、そこにも、自分は投影されてないんですか?
紅:全然。でもそういうノリは好きですね。自分でグチグチ考えてて、最終的に攻にひっぱりあげられるっのが、きゃ~素敵? っていう。読んでる方にも素敵って思ってもらえる、一番わかりやすい王道パターンじゃないですか。自分が助けあげられたいわけじゃないんです。
―― 助けてあげたいほう?
紅:うーん、そうかもしれないですけど、だからといってそこには自分が入っているかっていうのは別の話で。映画を観てるようなものですね。「そこで、助けてあげて!!」「わー、やったぁかっこいい!!」みたいな。
葵:マンガ家って、監督であり、脚本家であり、演出家でもあるから、そこに自分が入ってちゃあ、客観的に見られなくなる。
紅:自己満足なものにしかならないから。


二人の未来
―― マンガ家になって良かったこと、悪かったことを教えてください。
紅:普通の人生を送っていただけじゃ知りえないことをいっぱい知りえたし、会えない人と知り会えたこと。それはやっぱり財産。その反面、普通の生活で失ったものはたくさん…(笑)。 九時五時の生活を送っていれば、人生もっと楽だったのかなって。でも、朝九時に起きられないよな~。 高校を卒業して短大に進むときも、美術系は考えたこともなくて、短大の歴史学部に進みまして。それで歴史を専攻していたからといっても、将来歴史マンガを描こうなんて全然思ってもみなかった。上京したのも就職す
るために上京したのであって、マンガ家になれるなんて思ってもいなかった。一生趣味で描いていけたらいいな、とは思っていましたが。
葵:良い点はマンガ自体が、好きなもの、表現したいものをカタチにできる仕事だってこと。悪い点は、ひきこもりになりがちになること(笑)。運動不足になったりとか。時間に区切りのない仕事なので、普通の社会人みたいに、夜も自由ではないですから。メリハリがなくなるの。そういうところですかね。
―― ふたりでやって、良いところと悪いところは?
紅:良いところは仕事量が半分のところ(笑)。悪いところは、四六時中一緒にいることになっちゃうから、お前は飽きた~みたいな(笑)。刺激が欲しい~みたいな。
―― 今後はどんな作品を?
紅:佐野&わたなべ名義でもっと描きたいし、ボーイズでももっと描きたい。常になんでもチャレンジしていきたいですね。パターンにはまって、これを描いときゃいいやってなっちゃうと、つまんないと思う。
葵:いままで描かなかったジャンルに挑戦したいです。あとは、最近描いてないので、少しアクションがあるようなマンガを描きたいな。
―― 受攻を逆転して描いてみたいとは?
葵:今のところないですね。まあ、機会があったら。
紅:それこそ、読者を裏切る最大のサプライズだよ。
―― 『花恋』でぜひ(笑)。では最後に、読者の皆さんに一言。
紅:何をしてもついてきてくださいね?
葵:読んでもらえるだけで作家は嬉しいので、読みつづけてもらえたら。
―― 今回は、ありがとうございました。


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