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久し振りに「シウマイ」を買い、素晴らしいデザインのそれに「ブラック・アウト」してしまうような衝撃にみまわれました。(W・M談)


第33食 ●世紀末猛暑の強力助っ人!? 映画『ホワイトアウト』●


 原稿掲載順の都合で御報告が遅れたが、『ホワイトアウト』を観るべく公開一週後の8月最終週末に某映画館タワーに赴いた。諸々の事情で1時間以上前に現地に到着してしまい、喫茶店嫌いの俺は冷房の効いたロビーで本でも読むか〜、とタカを括ったが… ななナンと、ロビー内には早くも行列が!! テレビCMの『上映中』を“焼酎のお湯割り”に例えると、必ずと言って良い程“梅干かレモン”の如く『大ヒット』の文字がくっついて胡散臭さを醸し出しているが、たまにはホントの事もあるもんだ… と妙に感心しながら列に並んだ。
 大概は若いカップルか主演の織田裕二氏目当ての若い女性だが、中年女性のグループもチラホラと目立つ。次々とやって来るお客さんが『前売り券』を手にしている事に着目しつつ、それだけ期待度が高い作品なのか、『別の事情』なのか? などと考えているうちにテレビCMでお馴染みのハイライトシーンなのだろう、ヘリ墜落の『ズシ〜ン』音が劇場から漏れて、程なく前回上映が終了。ドッと客席になだれ込めば、708席は一部指定席を除いてほぼ満席状態! 前回御紹介した『顔』に続いて、大勢の見知らぬ人々と共に『ホワイトアウト』を鑑賞させて戴いた。


 映画の内容は、一般人の主人公・織田氏が、地毛をドレッドヘアにして“妙に目立つテロリスト”役に臨んだ佐藤浩市氏に『このダムは絶対おまえらの好きにさせない!』と宣言。雪山にて『ひとり“八甲田山”』状態で奮闘する中、時折松嶋菜々子嬢が華を添えて、ハイライトはヘリの墜落シーン… とテレビCMで流れている通りだが、一応ちゃんと説明しておこう。  日本最大6億立方メートルの貯水量を誇り、150万キロワットの電力を発電する新潟県奥遠和ダムの運転員・富樫輝男(織田)は、親友かつ同僚・吉岡和志(石黒賢)と共に、遭難者救助のために猛吹雪の中を出発。ようやく救助した遭難者を運ぶ途中、吉岡が負傷。富樫は一人で応援を呼ぶために下山を決意して、途中ホワイトアウト(吹雪の中発生したガスと舞い上がった雪があたりを覆い、視界を完全に奪ってしまう白い闇)に襲われつつも無事下山。翌朝、遭難者は救助されるが、吉岡は遺体で発見される。その2ヶ月後、富樫は吉岡のフィアンセ平川千晶(松嶋)が奥遠和ダムを訪れるのを待つが、到着と同時にダムと発電所がテロリスト・グループに占拠されてしまう。犯人グループ『赤い月』のリーダー宇津木雅彦(佐藤)はダムの職員を人質にとって50億円を政府に要求して、拒否すればダムを爆発すると通告。決壊すれば下流域の住民20万世帯は一瞬のうちに洪水に飲み込まれてしまう大惨事。期限は24時間だが、ダムに通じる唯一のルートは犯人グループが爆破、悪天候でヘリコプターも飛ばせず、警察は成す術もない。が、『偶然逃げおおせた』富樫は、仲間と麓の住民を救うことを決意! たった一人の闘うべく雪山で悪戦苦闘する… といったところだ。
 説明ついでに同名の原作は吉川英治文学新人賞を受賞。1995年に発売以来45万部のベストセラーを続けていたが、映画化決定後に文庫本との累計で100万部を突破! 映画も全国257館で公開11日目にして観客動員100万人を数え、配集30億を越える快進撃を続けているとの事。

 と、景気の良い記録を挙げたところで俺的な記録も御紹介させて戴こう。それは『テレビなシネマ』企画始まって以来、上映中に時計を見た最多記録です。パチパチ… とひとり拍手する次第だが、いやぁ先月衝動買いした金6800円也のスウォッチをこんなにマジマジと見るとは思わなかったぞぃ! 10回までは数えたが、後は記憶にない程頻繁に俺の視線は時計と画面を行ったり来たりで、上映間際にひとりで隣に座った若い女性にはさぞ不快な思いをさせてしまっただろう、マナーの悪い客に成り下がったものだとマジで反省しております。
 いや、ストーリーは悪くないと思う。織田氏が『そりゃ死ぬだろう』的状況下を何度もクリアするのも主人公の宿命。自動小銃等で武装して下界に通じる唯一の道路を封鎖する『赤い月』なるテロ集団も現実味が無いとも思わない。“テロリスト”よりは“ただの乱暴者で冷血な殺人者”に見える佐藤氏にも“それなり”の訳がある。ドレッドヘアがお似合いとは言い難いが、つい最近観た『顔』のみならず、今まではガラリ変わった役作りは評価に値するだろう。テロリストA、もとい笠原義人役の吹越満氏も実にオイシイ役まわりを着実にこなしていたし、テロリストBの橋本さとしは、後に観た『トリック』の千里眼桂木役の方が見栄えがしたかな? と男優陣は悪くないのだが、唯一の女性出演者やも知れずの松嶋菜々子嬢の扱いには『???』の連続だった。

 婚約者を見殺しにしたとの思い込みで主人公を恨む気持ちは理解出来るのだが、テロリスト氏らに対しても終始挑戦的な視線なのはどうしたものか? そりゃあ卑劣な凶悪犯罪者を憎み蔑むのはごもっともだが、もう少し怖がって戴かなければ『こいつも絶対助かる訳ね』的フィルターがかかってしまって緊迫感ゼロ。最近オンエアされた『百年の物語』(TBS系)でも高視聴率を叩き出した今をときめく松嶋嬢だけに、そういう意味では彼女も主役なのか? などと思いつつ、原作の平川千晶なる女性がどう描かれているのかは知らないが、読者のイマジネーションに委ねる小説と映画は違う。ただの一度も怖がる事なく眉間に皺を寄せ続ける由縁は、大量生産を強いられたサンドイッチを反故にされたからか? と考えれば『女性の作った料理を粗末にするなかれ』となかなか興味深い裏テーマとも取れるが、それは本編に全く関係がない。そもそも怪獣映画やパニック映画は、逃げまどう人々が居てこそ怪獣や大自然の恐ろしさが強調されて、主人公がヒーロー然と活躍出来るもの。なんとなれば原作には登場しなくとも、もう一人“恐がり要因”として女優を立てて欲しかったぞ! と、出演者の感想はこのくらいにして、時計を見続ける大きな原因その一は、同じ様な構図による主要人物のアップ攻撃だろう。
 冒頭ではかろうじて『もうひとつの主役』である奥遠和ダムや本物のホワイトアウトに遭遇する雪山が“引き”の構図で観せて戴けるが、後はこれでもか! のアップ、ツーショット、トータルショットばかり。ビデオ化を考慮して『白一色の世界』で『たったひとり戦う主人公』を引きで捉えるシーンを押さえたのか? とも想像出来るが、大スクリーンでの単調なアップの繰り返しは苦痛の一言。後半までは集中力が持たなかったので『無線の“何やら”で実は犯人は…』との大仕掛けがイマイチ良く理解出来ずに、悔しい思いをしてしまった。
 所轄署の奥田署長(中村嘉葎雄)や警察の藤巻刑事局長(古尾谷雅人)たちのシーンも、ダム組の芝居と全く毛色の違う警察モノ然とした白々さが目立って、益々俺の視線を腕時計へと向けさせてくれる。勿論中村氏は別格の説得力を遺憾なく発揮。事件現場におらずとも、眉間に皺の松嶋嬢よりは余程事の重大さを感じさせてはくれるが、俳優としての『別格感』が逆に映画の『嘘臭さ』に見えてしまうのは、俺のひねくれた性格に問題があるのだろうか? 
 古尾谷氏と山田辰夫氏が体制側の重鎮を演じるとは「長生きはしてみるものだ」と感慨深いが、実はこいつらも事件と繋がってないか? と思う程に違和感があった… 等々色々な事を考えていると時間は過ぎて映画はクライマックスに突入。やっと御対面の織田vs佐藤両氏のバトルシーン!! だが佐藤氏はその前に繰り広げられるvs吹越氏に比べて主役への遠慮なのか? イマイチ迫力に欠けた気がしたが、雪崩によるヘリ墜落シーンのデジタル合成はそこそこの迫力。ラストの松嶋嬢にまつわるエピソードは、設定、演出も含めあまりに『?』が多いので割愛させて戴くが、2時間9分の大作が終わった感想は、ズバリ「テレビで観たかった」。

 今年の元旦に堂々オンエアの『踊る大捜査線 ザ・ムービー』('98/フジテレビジョン)は、ストーリーの多重構造故に場面転換が多い事と挿入されるCMの多さで、途中脱落。改めてビデオを借りて来る事と相成ったが、アップ多用でストーリー展開がダラダラ感じられた『ホワイトアウト』は、CMが入る事でメリハリが産まれる作品のような気がしてならず… 無意識のうちに、CMポイントを探し当てては時計を見ていた事にやっと気付いて胸のつかえが取れた思いだ。
 しかし猛暑も手伝って映画館に涼を求める観客が押し寄せたと言う訳でもないだろう。この映画の為に300本の取材をこなしたという織田氏が、『踊る大捜査線・秋の犯罪撲滅スペシャル』('98 フジ系)にて潜入捜査先の会社で営業成績を上げて帰って来た優秀な元・営業マンである青島俊作のキャラに被るが、劇場に客を呼び寄せるパワーはマジで素晴らしい。俺は『色々な意味』でクールダウンさせて戴いたが、話題作を観た! と自慢出来るのも映画の楽しみ方。朝夕だけは比較的涼しくなった今日この頃では、大自然の猛威と戦いながら撮影に挑んだスタッフの『熱気』がスクリーンから感じられるやも知れず。テレビオンエアは随分と先の事であり、ビデオでの鑑賞もこれまた『色々な意味』でオススメしないので、どうしても観たい! と思われる方は今からでも劇場に足を運ぶ事を推奨致します。


 因みに若松節朗監督と織田裕二氏のコンビ作は『振り返れば奴がいる』『お金がない!』 『正義は勝つ』『恋はあせらず』(すべてフジ系)の4作品で、一般的には三谷好喜氏のデビュー作でもある『振り返れば奴がいる』がダントツ人気だが、個人的には『お金がない!』('94)が一番のお気に入りだ。
 特にエンディング映像が圧巻! 若松監督の演出か否かとフィルム撮影かビデオを加工したのかは不明だが、若き織田社長が広〜いオフィスに重役出勤してから、社員や外人来客に挨拶しつつ社長の席に着くまでを途切れる事なくワンキャメ長回しで追ったお洒落さは、何度観ても色あせない魅力に溢れている。勿論ドラマも面白かったが、何よりもエンディング映像は必見だ! とこの場を借りて激しく推薦させて戴こう。

============<作品データ>============

『ホワイトアウト』
('00東宝/2時間9分/ホワイトアウト・パートナーズ:日本ヘラルド映画/フジテレビ/東宝/日本ビクター/電通/アイ・エヌ・ピー/デステニィー)

<CAST>
富樫輝男・織田裕二/平川千晶・松嶋菜々子/吉岡和志・石黒賢/笠原義人・吹越満/橋本さとし/山田辰夫/藤巻刑事局長・古尾谷雅人/奥田勲・中村嘉葎雄/岩崎吉光・平田満/宇津木雅彦・佐藤浩市 ほか
<STAFF>
製作:坂上直行・宮内正喜・岸田卓郎・高井英幸
企画:塩原徹・河村雄太郎・島谷能成・永田芳男
プロデューサー:小滝祥平・遠谷信幸・石原隆・臼井裕詞
アソシエイト・プロデューサー:野口照彦・千野毅彦・佐倉寛二郎・前島良行
原作:真保裕一『ホワイトアウト』(新潮社)
脚本:真保裕一/長谷川康夫・飯田健三郎
撮影:山本英夫
ビジュアル エフェクト:松本肇
音楽:ケンイシイ・住友紀人
監督:若松節朗

全国東宝系大ヒット公開中


構成・文/阪本 悠



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