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| 第2食 ●夏の風物詩、『怪談』『本当にあった怖い話』● |
その昔、夏のテレビと言えばドラマや映画は『怪談』や『お化け』ものの独壇場だったと記憶するが、昨今ではめっきり影を潜めた様で、テレビ雑誌によると8月の映画151本中(BS、地上波合計)8本と少ない中、5本がホラーもので「純正お化けモノ」は『学校の怪談3』『トイレの花子さん』『怪談』のたった3本しかなく、2時間ドラマは16本中『女医レイカ』『同窓会へようこそ』『ほんとうにあった怖い話』の3本である。 このあまりにもお寒い数字を見て、これは一体どういう事なのだろう… とまたもや考えてみた。 クーラーやレンタルビデオの普及は言うに及ばず、テレビの宿敵とも言えるゲームの世界では季節を問わず『わざわざ魔境に踏み入る』様な設定がやけに目立つし、最近では短くなりつつはあるものの『はまってしまって学業や仕事に支障をきたす』と言う『現実の恐怖』と常に背中合わせでもある。 新聞やワイドショーを連日賑わせる事件は、どれもこれも身の毛もよだつ程に恐ろしいものばかりであり、次世紀の担い手である若者達は仕事でも平気で「タメ口」を通し、辻切りが横行した江戸時代宜しく夜道を安心して歩けない昨今では、テレビのフィクションにわざわざ『恐怖』を求めるまでもないと言う事なのだろうか。 とは言っても、一見『恐怖モノ』とは思えない今期クールの連ドラもよくよく見渡してみると、『小市民ケーン』の新妻・真理子(羽田美智子)が、風呂を勧めるカモフラージュ夫・権(木梨則武)の前で「シャワー浴びてきましたから」と平気で言ってのけた時は寒気がしたし、『彼女たちの時代』で会社に苛められ続けている啓介(椎名桔平)が、いつ壊れてどんな暴走っぷりを見せてくれるかは、番組当初からの最大の関心事だった。『to heart 恋して死にたい』の透子(深田恭子)に至っては、バイトそっちのけで恋する時枝ユウジ(堂本剛)の仕事ぶりを望遠鏡で監視するわ、勝手に鍵を開けて部屋に侵入。あちこち片づけるわ、その場で携帯で友だちに長電話始めるわで『山村貞子』より恐ろしい女だ。『独身生活』の母・郁江(馬淵晴子)が枕を抱えて娘・杏子(江角マキコ)のベットに入り込んで「(悩み事を)一緒に考えましょ?」と言った時には背筋が凍ったし、『ザ・ドクター』では、どう見ても体格の違いすぎる一真(堤真一)と俊太郎(長嶋一茂)が、学生時代に同クラスのボクサーだったと言う設定が恐ろしい… 等々、それぞれ『身近な恐怖』を孕んではいるのだ。 だが、今年の夏も何処にも行けなかった俺は、是非ともテレビの「正統派幽霊番組」でコンビニエンスに夏を実感させて戴くべく、『怪談』と『本当にあった怖い話』の2本に希望を託して、部屋の灯りとクーラーを消したのだった。 現在ビデオ化やDVD化されていない『怪談』('64年・8月22日NHKBS2)は、テレビでなければ観られないとあって「有り難う、NHK。衛生放送万歳!」などと殊勝な気持ちでカレンダーに丸印を付けるわ、当日は友だちに電話しまくるわのはしゃぎっぷりで、仕事など一切手に付かない状態だった。 数々の外国映画賞に輝く小林正樹監督の、カンヌ映画祭審査員特別賞作であるとの予習も万全でテレビの前に正座したが、豪華キャストの競演と耽美的な映像、怖さを盛り上げる武満徹氏の音楽に、充分酔わせて戴いた。 4本のオムニバス中、第3話の「耳無し芳一の話」が圧巻で、当時26歳の中村賀津雄(現・嘉葎雄)氏が扮する『芳一』の少年っぷりにはただただ脱帽し、丹波哲郎氏扮する平家武者の幽霊っぷりも、「当時から霊界に造詣が深かったのか!?」と思わせる怖さだった。 冷静に考えてみると『幽霊に取り付かれるわ、先輩坊主がお経書き忘れた為に耳は引きちぎられるわで、実に気の毒な盲目少年の話』なのだが、『その後、その琵琶の腕が評判となって寺にはたいそうな金品が運び込まれましたとさ』とあっけなく閉める『粋』さに、怖さの中にもニヤリとさせられた次第で、第4話の短編「茶碗の中」では、数行にも満たない台詞と叫びの芝居だけで、リアリティ溢れる『恐怖』を見せつけてくれた、杉村春子先生の『先生』たる所以を納得させて戴いた。 そして『ほんとうにあった怖い話』(8月27日フジ)であるが、正面切った幽霊描写の演出が潔くて充分に怖かったのだが、キャストの好演が「読者投稿による、本当にあった」と言うくくりが醸し出す再現VTR感ティストとアンマッチで、ドラマならばオチをつけて戴きたいとの不満が残った。 オープニングを含む5作品中、ラストの中山美穂主演『夏の訪問者』だけは、「自分が死んだ事に気付いていなかった幽霊が、弟の事故を未然に防いで成仏して行く」と幽霊視線でドラマが進行、オチもついていて好感が持てたのだが、その直後に見せられたエンドロールの心霊写真攻めには、あくまでも『ドラマ』を楽しみたかった身にはかなり辛く、目を逸らしながらのスタッフ確認にひと苦労だった。 このキャストならば、'92、'93年に同じ枠で放送された『怪談-KWAIDAN- 1.2』(下記データ参照)の様な、風情溢れる時代劇フィクションが見たかったと、つくづく勿体なく思ってしまった。 今更古典と言う事なかれ。俺は木村拓也の民谷伊右衛門が観てみたいし、宅悦入道はこってりとした竹中直人が即思い浮かぶが、さっぱりした椎名桔平も怖そうだ。織田裕二や本木雅弘の芳一なら、さぞかし耳の引きちぎりがいがあるだろうが、坊主がお経を書き忘れないかも知れないなぁ。常盤貴子や中谷美紀のお岩さんも綺麗なだけに怖そうだし、広末涼子の化け猫などもキュートな怖さが期待出来そうだ… と想像しながら行く夏を惜しんだ次第だ。 次クールの連ドラは、刑事がやたら登場してのミステリーやサスペンスが多いらしい。 『秋の夜長のミステリー』も悪くないと期待をよせつつ、来年の夏にテレビから『純正幽霊モノ』が消えない事を切に願う気の早い俺なのだ。 |
============<番組データ>============
『怪談』('64年・文芸プロ=にんじんくらぶ)
監督:小林正樹/原作:小泉八雲(ラフカディオ・カーン)/脚本:水木洋子/音楽:武満徹
出演:「黒髪」… 三國連太郎、新珠三千代、渡辺美佐子 ほか
「雪女」… 仲代達也、岸恵子、菅井きん、浜村純 ほか
「耳無し芳一の話」… 中村賀津雄(現・嘉葎雄)、丹波哲郎、志村喬、田中邦衛、林与一、松村英子 ほか
「茶碗の中」… 中村翫右衛門、杉村春子、中谷昇、佐藤慶 ほか
『ほんとうにあった怖い話』(フジ金曜エンタテイメント 真夏の恐怖ミステリー)
原作:「ほんとにあった怖い話」(朝日ソノラマ刊)/音楽:藤原ヒロシ/プロデュース:後藤博幸「オープニング」…脚本・演出:鶴田法男
出演:池脇千鶴
「深夜病棟」…脚本:小川智子/演出:鶴田法男
出演:黒木瞳、星野有香、竹中直人(特別出演)ほか
「社内怪報」…脚本:三宅隆太/演出:関卓也
出演:杉本哲太、鷲尾真知子、大路恵美 ほか
「白昼のベル」…脚本:三宅隆太/演出:鶴田法男
出演:稲垣吾郎、渡辺慶、佐藤仁美 ほか
「夏の訪問者」…脚本:水橋文美江/演出:河毛俊作
出演:中山美穂、窪塚洋介、林宏和、吉行和子 ほか
『怪談 -KWAIDAN-』('92 フジ)
原作:小泉八雲(ラフカディオ・カーン)/脚本:岸田理生
「耳なし芳一のはなし」… 演出:久世光彦
出演:三上博史、中村久美、ジョニー大倉、名古屋章 ほか
「むじな」… 演出:三輪源一
出演:春風亭小朝、弥生みつき、梅津栄 ほか
「雪 女」… 演出:瀧川治水
出演:藤谷美和子、天宮良、原知佐子、横山道代、今福将雄 ほか
『怪談 -KWAIDAN- II』('93 フジ)
原作:小泉八雲(ラフカディオ・カーン)「怪談」より「ろくろ首」「葬られた秘密」
「ろくろ首」… 脚本:石井隆/演出:瀧川治水
出演:柳葉敏郎、夏川結衣、名古屋章
「長良屋お園の怪」… 脚本:岸田理生/演出:久世光彦
出演:清水美砂、内藤剛志、広田玲央名(現・レオナ)、三田村邦彦 ほか
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構成・文/阪本 悠 |
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