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| 第5食●サヨナラ『料理の鉄人』● |
料理番組好きとして放送開始当時は欠かさず観ていた『料理の鉄人』が終了するとの記事を見たのは夏前だったと記憶するのだが、『今後も年に数回のスペシャルとして登場の予定』とされていた事もあって、「ああ、終わるんだ」とさして驚きはしなかった。 凄腕の料理人と豪華な食材で6年間に渡って繰り広げられたバトルに『満腹』になってしまったのだろう、最近では録画したビデオも貯まったままだったが、一時期は『金曜の夜のお楽しみ』番組としてお世話になっていた『御恩』は充分に感じていたので、最終回スペシャル『完全なる料理の鉄人・最後の聖戦』と題された2時間半に及ぶ最終回のビデオを厳かな気持ちで拝見させて戴いた。 テレビ誌によると、『番組の和・フレンチ・中華の3鉄人+イタリアンの4人の鉄人トーナメントで『King Of 鉄人』を決める最終戦…』となっているのだが、番組の冒頭では『最終鉄人決定戦』の後に『世界最強シェフとの決定戦』とのテロップが出るではないか! いきなり「はぁ?」と首を捻ってしまったが、良く考えてみれば料理対決は1時間と決まっているので、先週トーナメントで勝ち進んだと言う陳建一 vs 坂井宏行の対決だけで2時間半番組になる訳はなく、後から観た前週のラストでも『もう一勝負用意してあ〜る』旨は確かに告げられていたのだが、最初から肩すかしを喰ってしまった感は否めなかった。 番組セットのメインにしつらえられた『鉄人席』は3席なのに、何故かイタリアンの鉄人席が別に用意されているのも腑に落ちず、「4席に増やせばいいじゃないか!?」と素朴な疑問が沸き上がるのだが、俺が観ていなかった間に『4席に増やす事は出来ないものの、イタリアンの鉄人もどうしても外せない』と言う切羽詰まった状況があったのか? と気にかかる。 だが、そんな不真面目な視聴者に答える義理は無いと言わんばかりに、白馬にまたがって『キッチンスタジアムの司祭』である鹿賀丈史氏が登場! ムチ打ち症を押して無茶な復帰会見に挑んだ華原朋美嬢を想い出して一抹の不安を感じながらも、『もうひとつの決定戦』が控えている事の説明も無いままに、鉄人・陳建一 vs 坂井宏行の『オマール海老対決』が始まった。 声優・太田真一郎氏のキッチンレポーターに加えて、新たに陳建一サイドには阿部知代アナウンサーも参加。一般視聴者のギャラリーや、両鉄人関係者の異様な騒ぎっぷりがスペシャル感を盛り上げる中、司会の福井謙二アナウンサーと服部幸男氏との息の合ったトークで番組はサクサクと進行して行き、名誉鉄人の石鍋裕・中村孝明氏や前週坂井宏行氏に破れた森本正治氏らが居並ぶゲスト席の、道場六三郎氏に勝敗のコメントを求めた。 「坂井さんは盛りつけが素晴らしい。陳さんは味一本だけど、秘伝の豆板醤があるから… たいがい辛くすりゃ結構旨いんだよ」とナチュラルハイなお答えにあちこちから失笑が漏れ、 「六三郎さんの魅力が凝縮された一言でありました」と福井氏が締めると、新たに『堂々と笑って良いんだ…』とスタジオが安堵の笑いに包まれた時、 「福井さん福井さん!! 中身の確認なんですが…」と阿部知代女史が割り込んで来た。そして、『オマールの果物寄せ』の食材説明で、その前には一応『柿』と発音していたのにも関わらず、 「『牡蠣』とマンゴーとオレンジ、蒸した爪のナマ(中)です」と発言!! 番組開始33分にして、急激に気持ちが醒めてしまった。 確かに阿部女史はこの番組のレギュラーではないし、割り込み方もかなり不自然だった。 最初に『柿』と発音した時もかなり危なかったが、『柿』と『牡蠣』、蒸した爪の『ナマ』はないだろう。生放送ではないのだ、せめて編集で差し替えて欲しかった… と思うものの、『入社14年目の阿部知代アナも舞い上がる程の緊張感』を重視するかの如く、その後もう一度『牡蠣』とダメ押しされても、福井氏も服部先生もお構いなして番組は進んで行った。 この番組と同じ日本テレワーク製作の『郁江・井森のお料理バンバン』で、司会の榊原郁江女史が『食べれる』を連呼し続ける事を常々苦々しく思い続けていたが、エミー賞を何度か受賞した『料理の鉄人・最終回』で、局アナが『柿』を『牡蠣』は酷すぎる!! 『食』に拘って『料理人』たちの功績を称え続けて来た番組だからこそ、せめて差し替えて欲しかったと実に残念な思いで、一応最後までビデオは観たが、一度引いた気持ちは戻る事なく、料理の内容も鉄人たちが流した汗や涙の事もあまり記憶に残らなかった。 だが、些細な事に拘っていると『クレーマー』と呼ばれて白い目で見られる昨今である。大切な『最後の料理』を記憶に留めなくてどうする?! と思い直して、広い心でもう1度最初からビデオを見直す事にしたが、そこでもうひとつの発見をする事になった。 鉄人・陳建一を95対94で下して『King Of 鉄人』に輝いた坂井宏行氏は、『世界最強シェフとの決定戦』として、『2年前京都で行われた“鉄人ワールドカップ”で中村孝明氏と引き分けた』フランス料理の『世界最強3ツ星シェフ』アラン・パッサールとの『龍崗鶏(ロンコンカイ)対決』に挑んだ。 『日本人が外国人を爽快にうち負かすのか!?』と言う、力道山時代のプロレスにも似た分かり易い構造で番組は更に盛り上がって行くのだが、アラン氏の作る4品中、スープ・3品分のソース・付け合わせの制作過程は見事にカットされ、坂井サイドもまるまる一皿と一品分が割愛されていた事に気が付いてしまったのだ。 『番組の主役』である鉄人や挑戦者の仕事を追うあまりに、助手たちの担当するパートは『全く』無視、または編集段階でカットしてしまった結果なのだろうと想像するし、実際に鉄人や挑戦者たちが日常厨房に立つ際に、全てのパートを1人で作っている訳ではない事は充分に解っている。制限時間内にカメラが入り込めない場合もあるのだろう。 だが、1時間で作る4品なり5品のメニューは鉄人が決める筈で、そのメニュー構成が勝敗を決めているのだ。『いつの間にか出来てました』と唐突に完成品を見せられても、『あれはどんな味付けで旨いのか不味いのか』の想像力を削ぎ取られてしまうし、試食の際に全くカットされる『皿飛ばし』(命名:阪本)メニューがある事にも大いに疑問が残る。その一品が『不味い』のか『語るに足らん』のか、その旨をキッチリしていただかないと後の採点をテロップで見せられても、視聴者的には全くの蚊帳の外の出来事となってしまうのである。 いつの間にか『料理の鉄人』を観なくなった原因は、恐らくこれだったのだ… と最終回でやっと気が付いて胸のつかえが取れたところで、鉄人・坂井宏行はオール20点のパーフェクトでアラン氏を下した。 「料理人になって本当に幸せでした。素晴らしい仲間と素晴らしいスタッフと共にこの番組が出来た事は生涯忘れる事は出来ないと思います」と坂井氏が声を詰まらせ、唯一6年間『現役鉄人』の座を守り続けた陳建一氏もスタッフの功績に感謝の言葉を述べて、 「番組は終わっても、我々は普段から同じ事をしています。心を込めたお料理で、お客さんにいっぱい来て欲しい。その為に一生懸命料理やってます!」と鉄人を代表して締めの言葉とした。 その姿に一様に涙しながら拍手を贈っていた鉄人たちと歴代の挑戦者たちの『料理人魂』には、テレビの前で素直に拍手を送らせて戴いたが、放送を観た彼らは『柿』を『牡蠣』と2度もコメントした『アナウンサー魂』と、差し替えなかった『制作者魂』をどう受け取ったのだろうかと、意地の悪い事も考えてしまった。 因みに俺がこの番組で1番印象深かったのは、ゲストコメンティターとして初登場の河村隆一氏が、モニターを観ながらあっけに取られた様に『お母さんは絶対に作らない料理ですよね』旨を漏らした事である。 考えてみれば、うら若いロッカーがしたり顔で美食を語る事はミスマッチであり、甘いマスクと美声でソロヒットを飛ばした河村隆一氏も『ハングリーなロッカー』なのだと再認識すると同時に、当時『常に恋をしていないと曲は作れない』と公言していた氏にとって、『燃える様な恋』に比べれば『美食を語る』など取るに足らん事なのだと、妙に納得した事が懐かしく想い出された。 来年1月にはスペシャル版として『キッチンスタジアム』を再開させると予告して番組は終わったが、是非とも河村氏に登場していただき、再び『ロッカー魂』を見せつけて戴きたいものである。 |
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<番組データー>-----------------------------------------------------------------------
『完全なる料理の鉄人・最後の聖戦』 放送日:9月24日(金)ヨル9:00〜11:37(157分 フジ系) プロデューサー:松尾利彦 ディレクター:田中経一 制作:日本テレワーク/フジテレビ 主宰:鹿賀丈史 実況:福井謙二 解説:服部幸應 審査員:浅野ゆう子/梅宮辰夫/チャン・ライ/細木数子/三田佳子/橋本龍太郎/岸朝子 鉄人:坂井宏行/陳建一/森本正治/神戸勝彦/石鍋裕/中村孝明/道場六三郎 歴代挑戦者:神田川敏郎 ほか |
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構成・文/阪本 悠 |
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