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第14食 ●コスプレ棋士、月下に集合!●

 今期クールの連ドラ中で俺が密かに楽しみにしていたのは、フジの月9でもTBSの東芝日曜劇場でもない、実はテレ朝月8『月下の棋士』だった。
 テレ朝の月8枠は元々コミック原作が多い枠だが『イグアナの娘』『ガラスの仮面』など女性誌漫画が中心で、オリジナル企画も前回の前田愛加藤あい嬢の『ベストフレンド』二宮和也渋谷すばる氏の『あぶない放課後』等々、どう考えても若い婦女子がターゲットの枠だろう。
 その月8に青年誌であるビッグコミックスピリッツ連載中のバリバリ劇画タッチで勝負師達を描く『月下の棋士』である。原作はパラパラと眺めた程度だが、番組枠とのミスマッチ感は、
男がツヨイと、女はウレシい。』なるキャッチコピーからも伺い知る事が出来る。
 何でも映像化が難しいとされていた作品でもあるらしく、無茶、あるいは無謀感に益々期待感は高まるばかり! と浮かれながらも、悲しいかなやはり月8は視聴習慣がついておらずで、録画した1,2話分のビデオを纏めて拝見させて戴いた。


 まず1話の冒頭は25年前に遡っての名人戦シーンから始まるのだが、主人公の祖父である御神三吉(高松英郎)、村木武雄(仲谷昇)そして、立会人・大原巌(中尾彬)のカラミは、雷のSEや照明のオドカシも何のその、至極真面目な芝居で番組開始早々に画面の濃度はかなり高い。
 お三方とも昨今のテレビドラマでも充分に活躍なされているので「久しぶりに観たぞ!」という驚きはないが、三つ巴となると相当な濃度を醸し出す訳で、月8どころか連ドラ全体にあるまじきこの重量感は、冠スペシャルの大企業内部告発系や大病院の派閥争い系かと見まごう程で、冒頭から唖然としてしまった。
 その後時代は現代に戻って、天才棋士・滝川幸次(田辺誠一)が登場。原作のイメージにかなり忠実にデフォルメされた佇まいから『ガラスの仮面』における『紫のバラの人=真澄様』の匂いをほのかに嗅ぎ取って、やっと頭が月8モードに戻って一安心? モノローグも担当する“なんちゃって新聞記者”立原真由美役の山口紗弥加嬢も月8らしさを強調してくれる。
 森田剛氏扮する氷室将介のチャラチャラッぷりは原作ファンのひんしゅくを買う事は必至と想像しつつ、刈田升三役の寺田農氏は、暫く御本人とは気付かない程のコスプレで笑かして戴いた。
 オリジナルキャラの川島なお美女史は堂々とした『川島なお美』ッぷりで、細川茂樹氏は自信過剰でオバカなキャラでそこそこ弾けていたが、久々のテレビ出演で第1話ゲストの小峰麗奈嬢は、ストーリー上何の必要性もない暴力バーのキャッチガール役で「はぁ、それで何なの?」と暫し思考が停止状態。
 そうこうする間にドラマはサクサクと進み、無事に氷室は宿命のライバル・滝川と運命的な出会いを果たしつつ、奨励会にも入会出来て第1話は終了した。
 う〜む… 決して面白くない訳ではない。昨今の連ドラで必ず見受けられる『何だこの芝居は!?』とキャスティングの経緯を詮索したくなる役者も居ない。奨励会のメンバーも地味な将棋おたく風にデフォルメされている。新聞記者たちも適度な柄の悪さが結構笑えて、随所に細かい配慮が観て取れる。
 にも関わらず高濃度三人衆の非日常性と氷室を取り巻く日常性とのギャップからか、全体的にバラバラな印象は否めなかったが、第1話はキャラクター紹介に終始するが『定石』なので、取り敢えず第2話も続けて観る事にした。
 ゲストの村森聖役・伊東努(デビット伊東)氏は前半そこそこ押さえた演技だったが、病院を抜け出して死を覚悟の勝負に挑む後半は、頭を剃って対局に挑むとの事で坊主ズラに白装束姿である! コントとドラマの狭間で吐血しながら駒を打つ大仰な芝居に、「これは笑っても良いものか?」と躊躇している間に主人公は最大のピンチを迎える訳だが、『氷室の負けだ』なる字幕がドンドンドンのSEと共に色々なパターンでインサート、である。取り敢えずは笑って良いらしいと判断したのも束の間、ハイライトの対局シーンだけに将棋盤に吐血する村森と氷室のシリアスな死闘が繰り広げられて番組は終了。途中に滝川役の田辺誠一氏がいい感じで崩壊の兆しを見せ始めていたにも関わらず、やたら主人公のカッコ良さだけが目立つ印象のみが残ってしまった。
 うぅ〜む… やはり決して面白くない訳ではないのだが、期待していた無茶・無謀感が得られぬままに今度はオンエアで第3話にチャレンジしてみた。


 するとどうでしょう? 2話から少々ネタ振りがあった仲谷昇氏は、公然と日本刀を振り回しての壊れッぷり! 田辺誠一氏も2話で前フリがあったとはいえ、完璧に川島なお美女史の色香にやられてしまっているではないか! しかも回想シーンでは神のお告を受けたとかで、
「名人になるその日まで、何があっても死にはしない」と明言、目を瞑って交通量の激しい車道を横切って不敵な笑みを浮かべての壊れッぷりである。
 ゲストの武者小路“占い棋士”和清役の宇梶剛志氏は「ラッキカラーはブラ〜ック」との占いに従って顔と手の甲を黒塗りにして登場! どうも話数を追う毎にこのドラマはどんどん崩れて行くらしい事が判明した訳だが、このコスプレキャラ大会炸裂の第3話にしてやっと全体を通して『月下の棋士』と言うドラマを楽しめる様になった事に気付いて、ハタと膝を打った。
 そう、1,2での違和感はコミックのウソ臭い世界観にありながら、圧倒的に登場人物のコスプレ度が低かったからこそ、唯一キャラの立っている氷室が絡まないシーンに違和感を覚えた訳だ。
 仲谷昇氏も日本刀を振り回して氷室の帽子を斬り付けてこそ村木武雄なのであり、車に当たらずにニヤリと笑みを浮かべてこその宿敵・滝川幸次なのだろう。
 中尾彬氏も川島なお美の躰を狙ってばかりではいつもの中尾彬に他ならない。狂気の日本刀オヤジ・村木を適当にヘコヘコと持ち上げつつ、滝川に奪われた名人の座への返り咲きを狙ってこその大原巌なのだろう。シリアスな芝居など微塵も考えずに、黒塗りの顔面から汗を流して熱演したゲスト棋士・宇梶剛志氏の存在もコスプレ度の大幅アップに貢献した事は言うまでもない。
 無論、原作ファンにとってはチャラチャラした森田版氷室は、話数が進んでも違和感が否めないだろうと想像する。だが、手加減なしで遺憾なく存在感を発揮し続ける中尾高松仲谷三御大、次々と現れては消えて行くであろう『世界オモシロ人間大集合』的なゲスト棋士、登場するだけで画面中に好いたらしい色香をまき散らす川島なお美女史、神に守られてあらぬ行動を取る壊れッぷりを好演する田辺誠一氏等々、キャラのコスプレ度の上昇と共に、少々お行儀の悪い森田版氷室が唯一まともなキャラに見える方が、ドラマとしては断然面白いではないか!
 主演の森田剛氏は『PU-PU-PU』('98TBS)、『新・俺たちの旅』('99日本テレビ)ではカミセンの中でも若干デフォルメされた芝居で少々の違和感を感じていたのだが、今回は年上の強者たちに囲まれる事で実に自然な主人公に収まっている。持ち前の鋭い視線も、将棋盤を挟んで対峙する相手に向ける分には違和感が無く、肉体的な指摘で申し訳ないが、気になる顔面のホクロも対戦時の派手な照明で上手くカバーされている。駒を打つ決めのポーズが甘い点が少々気になるが、回を追う毎に様になって来る事に期待したい。
 奇しくもテレ朝月曜8時枠は、この『月下の棋士』をもって終了、4月からはバラエティが投入され、金・土曜の夜11時から1時間の連ドラ枠新設が先頃発表になった。
 月8枠有終の美を飾るに相応しい人気コミック原作の『月下の棋士』だが、どうせ終わる枠だ!! とばかりに、無茶な弾けッぷりで伝説のドラマとして名を残して欲しいものだ。


 と言う訳で『月下の棋士』3話分を、かなりじっくりと鑑賞させて戴いた。原作単稿本ではゆうに一巻分はあるという対戦相手のエピソードが1話に凝縮されているので、ビデオでゆっくり観る分には問題はないのだが、リアルタイムで観た第3話に関しては、過去のエピソードの交差が多い事もあって夜8時代には少々慌ただしく、結局録画したビデオに頼ってしまった。勿論普通のサラリーマン諸氏がこの時間に帰宅してテレビの前に陣取っているとは考え難いので、温泉卵をツマミに熱燗でも舐めつつビデオでじっくり楽しむ事をお勧め致します。
 因みに本日オンエアの第4話ゲストは気の弱い愛妻家・鈴本永吉役で高嶋政伸氏が登場。『ホテル』における「も〜し訳御座いません」との見事な恐縮ッぷりがすっかり持ち芸となった感のある高嶋氏だが、予告では将棋盤の前で氷室に手をついていたので、どんな恐縮ッぷりを披露してくれるのか、実に楽しみである。

==========<番組データ>==========
『月下の棋士』毎週月曜ヨル8時〜8時54分 テレ朝系

原作:「月下の棋士」(能條純一:作・小学館ビッグコミックスピリッツ刊)
脚本:尾崎将也
演出:塚本連平
チーフプロデューサー:桑田潔(テレビ朝日)
プロデューサー:杉山登(テレビ朝日)/遠田孝一(MMJ)
協力プロデューサー:東城祐司(MMJ)/両沢和幸
制作:テレビ朝日・MMJ

出演:氷室将介・森田剛/立原真由美・山口紗弥加/刈田升三・寺田農/幸田・細川茂樹/小峰麗奈(1話ゲスト)/村森聖・伊藤努(2話ゲスト)/村森妙子・中原さなえ(2話ゲスト)/武者小路和清・宇梶剛志/大原巌・中尾彬/村木武雄・仲谷昇/御神三吉・高松英郎/石丸千代子・川島なお美/滝川幸次・田辺誠一 ほか

構成・文/阪本 悠





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