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| 第20食 ●もうひとつの天国 映画『アナザヘブン』● |
お陰様で『萬年テレビ亭・テレビ丼』も無事20食を迎える事が出来ました。これも全て皆様のお運びがあっての事と深く感謝しつつ、これからもどうぞテレビ丼を宜しくお願い申しあげます… と頭を垂れての第20食。記念企画という訳ではないのだが、初めて映画について包丁を振るわせて戴く事となりました。 以前、ビデオや衛星・地上波で映画に触れた事はあったが、今回は劇場に足を運んでの大スクリーン鑑賞である。きっかけはネタ枯れを心配するウェブ・マスター氏(以下W・M氏)の、 「阪本さん、映画はどうよ?」のぶっきらぼうながらも心優しい一言から。テレビでガンガン宣伝しまくっている、もしくはキャストがテレビ的な映画に限ってお品書きに乗せてみようか? との事で即決。が、しかし… 『貧乏暇無し』なる諺を忠実に実践し続ける阪本は、『連ドラ定食』の関係上、年に2回の番組改編時期以外は睡眠時間が極端に少ない。最近では座り心地がすこぶる宜しい映画館の椅子で萬年不足の睡眠を補ってしまう危険性を孕んでのギャンブル企画だが、映画を観る観客全てが充分な睡眠を摂っているとも言い切れまい。 「それはそれでしょう」といい加減ながらも的を得ているW・M氏の一言に励まされつつ、前日睡眠時間15分との悪条件で『アナザヘヴン』を鑑賞して来た。 何故『アナザヘブン』なのかと言えば、現在テレ朝で連続ドラマがオンエア中の“メディアミックス”だからもあるが、実は江口洋介氏目当てで決めさせて戴いた。 『ひとつ屋根の下』は殆ど観ていなかったし、関東地区で最近再放送されていた『東京ラブストーリー』や、髪型繋がりなのか? 何故か武田鉄矢氏の弟役という無茶なキャスティングの『101回目のプロポーズ』も江口氏に対してさしたる印象はなかった。が、『救命病棟24時』と『モナリザの微笑み』の第2話(のみ)で、急に男の色気が出て来た気がしたので、スクリーンで確認したくなった事と、柏原崇、松雪泰子、原田芳雄と『映画しか出ません』的俳優さんの匂いがない、実にテレビ的なキャスティングも興味深かった。 ストーリーは、男の首の骨を折り脳みそを抜き取って調理してしまうという連続猟奇殺人事件が発生。科学では解けない謎があることを主張する元犯罪マニアの刑事・早瀬マナブ(江口洋介)と、超現実主義者のベテラン刑事・飛鷹健一郎(原田芳雄)は対立しながらも事件を追う。やがて犯行現場から有力な手がかりが発見され、女子大生・柏木千鶴(岡元夕紀子)が捜査上に浮かび上がる。男の首をへし折って脳味噌を取り出すなど女に出来る筈はないと飛鷹は主張するが… といったところだが、テレビ版が第6話から映画とリンクし始めたので、ネタバレは慎ませて戴く。 脚本・監督の飯田譲治氏は、深夜の連続ドラマ『NIGHT HEAD』('92年CX) の脚本で注目を集め、 『沙粧妙子 最後の事件』 ('95年CX) 『ギフト』 ('97年CX)を執筆。映画は『NIGHT HEAD』('94) 『らせん』('98)で脚本・監督を務めている。現在OA中の『アナザヘヴンeclipce』(テレ朝木20:54〜21:48)の1,2話の演出も担当しているが、全体に暗めの画面やタイアップの関係なのか、テーマ曲の他に挿入歌が2曲、劇中曲4曲! と歌ものが『これでもか!』と流れるあたりに、テレビドラマにあって日本映画的な泥臭い印象を受けた。前出の映画2本も意識的なのか持ち味なのか、そこはかとないダサさが「俺は今、日本映画を観ているんだ」という気にさせてくれたので覚悟? していたのだが、テレビ版とは裏腹にそこそこお洒落な作りで少々意外だった。 サスペンスタッチのスピード感を煽る為か、冒頭からめまぐるしいカットの連続でスクリーン近くに陣取った事を後悔したが、カットに合わせての効果音がやたらデカかったお陰でほぼ全編眠る事なく観られて有り難かった。 お目当ての江口洋介氏は、テレビで観るよりは数段良かった。が、切れた芝居で暴れまくる美味しい役どころの柏原崇氏のインパクトに比べると、もっと良く観せられたのでは? と見終わった後に喰い足りなさが残った。その他男優陣は、テレビ版と同じ顔ぶれの幕田ユウジ(加藤晴彦)、坂木警部(六平直政)、両角刑事(井田州彦)。テレビ版で両角刑事が何故耳に包帯を当てて足を引きずっているかの謎が解けるシーンでは客席から『成る程』と声にならない頷きが感じられるのは“メディアミックス”ならではのお楽しみだ。 江口氏とガッチリ絡む飛鷹刑事役の原田芳雄氏がルックス、芝居共に何とも古臭く「う〜ん、俺は今正に日本映画を観ているなぁ」と少々暑苦しく感じたが、中盤以降に盗聴・犯罪マニアで飛鷹ファンの幕田ユウジこと加藤晴彦氏の、何故ファンなのか? との答え、 「レトロでワイルドで堅物で…」なる台詞で帳消しにさせて戴いた。脚本では「レトロで、融通が利かなくて堅物で一直線で…」とあるらしいが、『レトロでワイルド』のゴロが妙に可笑しく、俳優・原田芳雄氏の存在をそのまま言い当てた飯田監督の愛の告白なのだろう。唯一客席から笑いが漏れる和やかなシーンだった。 テレビ版の主役・皆月悟郎役の大沢たかお氏も日本映画っぽい古臭さを醸し出しており、ユウジとの絡みで『現在オンエア中の連ドラ』感が呼び戻されていると感じるのだが、反面『ワイルド』な飛鷹にまんまと奪われた愛車に向かって吐く、 「ちくしょ〜! 俺もいつか刑事になってやる!!」との決め台詞がサマにならなかった加藤晴彦氏。そんな陳腐でベタでこっぱずかしい台詞、決まらなくて結構! と俺は思うがどうでしょう? 女優陣では、知的な美人女医役の松雪泰子女史は、文句無く美しかったッス。女子大生・柏木千鶴役の岡元夕紀子嬢もスクリーン栄えする美しさでなかなか宜しかった。 マナブの押し掛け恋人で物語のキーパーソンとなる大庭朝子役の市川実和子嬢は、雑誌の売れっ子モデルで、キューピーマヨネーズのCMでは電子レンジを背負っておられたインパクトの強いフェイスのお嬢さん。 犯人と刑事として知り合い、一方的にマナブに付きまとっているとの設定だが、露出度の高い服装に小さなバスケットを携えてロリーポップを舐めているという様式的な『あばずれ』ッぷりに「やはり日本映画を観ているなぁ〜」と感じるものの、事情はあろうが如何なるキャスティングなのか? と首を捻ってしまった。 無償の愛を捧げ身を挺して主人公を庇い… との役割には到底見えない芝居だったので、クライマックスに意外性をもたらしてくれた事は確かだが、ラストは浴槽シーンだぞ! ヌードを披露してくれれば俺の評価も変わったと思う。 そんなこんなで睡眠時間15分の悪条件にも関わらず、熟睡する事なく『アナザヘヴン』を見終えた訳だが、ここ数年テレビばかり観続けていたせいか、結構な気分転換になって楽しめた。 元々謎解き等には何の期待もせずに、ただテレビでお馴染みの俳優さんをスクリーンで観たかったと言うある種純粋な動機だった為に、さしたる不満も残らなかったし、宣伝文句の「ラスト30分に驚いた人97%」「その謎が解けた人5%」通りに、「えっ、こんな落ちなの!?」としっかり97%に入れた事は、長年少数派人生を送って来た俺には嬉しい出来事だった。 勿論『その謎は解けなかった』95%組に入れて戴く事が出来て至極光栄な気分のまま、LUNA SEAの河村隆一氏に「さ〜よなら〜♪」と送られて席を立った。 俺はかねがね飯田譲二氏は良い意味で『商売人』だと踏んでいたが、今回も見事にその手腕を発揮したのではないだろうか? なんせ、被害者にも犯人にも脳味噌がないのだ。謎がどうだ落ちがどうだなんて、文句の付け様がないじゃござんせんか… と見事に「もうひとつの展開」=メディアミックスされては、座布団を1枚進呈するしかないでしょう。 |
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============<作品データ>============ 『アナザヘブン』 CAST 早瀬マナブ・江口洋介/大庭朝子・市川実和子/飛鷹健一郎・原田芳雄/木村敦・柏原崇/柏木千鶴・岡元夕紀子/幕田ユウジ・加藤晴彦/坂木警部・六平直政/両角刑事・井田州彦/熊倉刑事・康喜弼/池上検死医・塩屋俊/笹本美奈・松雪泰子/赤城幸造・柄本明 ほか STAFF 原作:飯田譲治 + 梓河人『アナザヘヴン』(角川書店刊) 監督・脚本:飯田譲治 主題歌:LUNA SEA (UNIVERSAL VICTOR) プロデューサー:河井真也 共同プロデューサー:石原真 ライン・プロデューサー:田口聖 撮影:高瀬比呂志/美術:斎藤岩男/照明:小野晃/音楽:岩代太郎/録音:岩倉雅之 アソシエートプロデューサー:山下泰英 エグゼクティブ:プロデューサー 横浜豊行/宮島秀司/豊田俊穂/梅沢道彦 制作:オメガ・プロジェクト株式会社/アナザヘヴン株式会社 製作:アナザヘヴン・フィルムパートナーズ/オメガ・プロジェクト/松竹/オフィス・トゥー・ワン/ポニーキャニオン/博報堂/テレビ朝日 配給:松竹株式会社 全国松竹系にて公開中 |
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構成・文/阪本 悠 |
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