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誰が誰だかわからない・・・歳ですかねぇ。(↑この熊たちにも、それぞれ名前があるらしい)


第21食 ●俺も走った!? モー娘。映画『ピンチランナー』●


 そんなこんなで始まった『テレ丼』新企画? テレビな映画を観に行こう! と勝手に銘々しての第二弾は、『モー娘。走る!』なるキャッチコピーの『ピンチランナー』を観に行って来た。
 いわゆるアイドル映画を観るのはもしかしたら初めての経験であり、しかも『モー娘。』が『天むす』の新種でない事は解っていても、メンバーの顔と名前が一致するのは後藤真希嬢ただひとり。理由は俺がロリコンだからでは断じてない。
 それは昨年夏のとある日曜日の事。東京のごく一部は夕方から激しい落雷に見舞われた。我が家はまず屋上のBSアンテナがやられ、次に地上波アンテナもやられた。元々電波受信状態がすこぶる悪い建物なので、アンテナをやられるとテレビが一切映らなくなるのだが、雷はますます酷くパソコンの電源も落とす事になり… そんな日に唯一テレビ東京の電波だけは受信出来たので、初めて『ASAYAN』なる番組を観た訳だ。新曲『ラブマシーン』の歌入れドキュメントVTRの実に巧みな編集に引き込まれてしまってその後数回観続けた結果、鳴り物入りの新加入メンバー当時13歳の後藤真希嬢だけがすりこまれてしまったのでした。てな具合で、各メンバーの年齢や誰がどういうキャラなのか等々、全く予備知識がない状態なれど「アイドル映画で思いっきりヤラれてみたい」と自虐的発想と「これを機会にメンバーの顔と名前を覚えてやる!」との野心に燃えつつ、滅茶苦茶混んでいて立ち見だったらどうしよう… とビクビクしながら劇場に向かった。

 平日午後2時からの回なれど、何故かおやじが目立った劇場が立ち見でなかった事に胸を撫で下ろしたが、如何にもオタク然とした少々太めで、キャップ、眼鏡、ショルダーバック姿のお兄さんや、ドヤドヤと制服姿の女子高生一団がやって来たので「あぁ、俺はアイドル映画を観に来ているんだ…」との実感がヒシヒシと押し寄せる。この女子高生さん達がテレビの中だけだと思っていた『マッじぃ〜』『ヤバくない、それ?』を連発。お菓子を買いに走るわギャハギャハ騒ぎ出すわで、こりゃあ上映中もウルサイんだべなぁ と思って、またまた最前列近くに場所を移してじっくり鑑賞させて戴いた。
 物語は、サブタイトル通りに『モー娘。が走る』の一言に尽き、ピンクの背景が目に痛い公式ホームページにも『ストーリー』のコンテンツは見あたらないと言う開き直りッぷりには脱帽だ。
 一応かいつまんで言うならば、たったひとりの陸上部員・安倍なつみの元に、各々問題を抱える市井紗耶香(父の暴力)、後藤真希(やや不良?)、飯田圭織(自殺未遂騒動)、矢口真里(恋のライバル)が次々と集まって来て、“ひたちなか全国少女駅伝大会”に出場。21.097キロを走り抜く! というお話だ。
 彼女らの通う高校近くのパン屋の主人役・中澤裕子嬢は27歳という年齢上、『彼女たちの精神を鍛える係り』との設定でマラソンに参加しないのは解るのだが、飯田圭織さんが自殺未遂騒動を起こした際に、大病院の跡取り娘役・保田圭さんが唐突に、「私、心臓が悪いの! いつまで自分が生きられるのか解らなくてとても怖いの」旨を告白するシーンには度肝を抜かれてしまった。
 保田さんがモー娘。の中にあってどういうキャラなのかは知らないが、くっきり眉毛につり目で気の強そうなフェイスからは相当な無理を感じると同時に、ハーレクイン・ロマンスの『僕が王子だから?』に匹敵する気の利いたギャグに思わず膝をちつつ、「あぁ、今俺は正にアイドル映画を観ているんだ…」と熱いモノが胸にこみ上げて来た。
 なんとなれば次々に「実は私男なの」「私は異星人」「ホントはウルトラマンの妹」「未来から来たアンドロイドなの」とたたみかけて欲しいところだが、それではマラソン大会に出られなくなってしまう訳で、5人はトレーニングに励んで本番を迎える… と相成る訳だ。

 気になるお芝居の方は、おしなべて「この娘が凄く良い!」とも「この娘が凄く酷い!」とも思わせない“そこそこ感”を保ち続けたのは、『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズで名を馳せた那須博之監督の手腕であり、市井紗耶香嬢のやや突出した印象も、唐突な脱退劇と笑顔のラストステージ報道あっての事だろう。
 脇を固める学校サイドの光浦靖子近藤芳正北村総一朗氏も極力モー娘。には絡まず、市井さんの父親役・斉藤洋介氏も娘を虐待する暴力親父で芝居らしい芝居もなく、極力ベテラン俳優陣とモー娘。の芝居を絡ませまいとする制作サイドの努力の跡が伺える。
 一方モー娘。と積極的に絡む、矢口さんの幼なじみ役で安倍さんをそっと見守る押尾学氏は、日テレ『愛、ときどき嘘』やテレ朝特番『輝ける瞬間(とき)』で気になっていた、ナイスフェイスのお兄さん。サーフボートを抱えるだけでこれと言った芝居どころがなかったが、今後の活躍に期待したい若手俳優。バスケ部エース・飯田さんのライバル役・北川弘美さんは、フジ『美少女H2』や、日テレ『伝説の教師』に御主演中。実に自然なお芝居で学園モノ感を盛り上げていたが、マラソン選手、エスタ・ワンジロ女史の唐突な本人役御出演とカタコト日本語が、いやが上にも「アイドル映画を観ている」感を盛り上げてくれるぞ!
 かくして『七人の侍』宜しく集まった少女たちが、さしたる挫折や妨害がある訳でもなく、熾烈な恋のさやあて、胸が熱くなる様なそれでいて爽やかなラブシーン、血の出る様な特訓などもないままに、ハイライトの“ひたちなか全国少女駅伝大会”に出場して21.097キロを走り抜く訳で、「このまま何事も起こらないのか?」と気付き始める中盤以降、中年いち観客としては結構辛いモノがあった。
 特に駅伝大会開会式関連は、テレビカメラ映像からフィルムへのブロウアップが挿入されている為に画質の違いがやたら目についた。ビデオで鑑賞する分には遜色ないのだろうがスクリーンでの違和感は否めないし、実際に5人が走るシーンは急にドキュメンタリータッチで『素』のリアクションを観せられてもなぁ… と思っているうちに、アンカー安倍なつみ嬢が見事ゴールを決めて映画は終わる訳だ。
 しかもキャストロールが終わってもう一度、三角岩に荒波打ちつける『東映マーク』が出て、冒頭シーンに戻った時は「また最初から見せられるのか!?」と、気の弱い俺の心臓はバクバクものだったが、『新メンバーがローソン前で抱負を語る』というスポンサーがらみのボーナス映像だったのでホッと胸を撫で下ろした。
 普通なら何故コンビニ前で? と違和感を覚えるものだが、このお嬢さん達は『コンビニ前の高校生』っぷりが実に板についているのですんなり観られたが、やがて押しも押されぬモー娘。を背負って立つ『顔』になるのかねぇ… などと友人の子供を見る思いでしみじみしつつ、席を立った。
 まぁ、映画館を出る男性客というのは、コトの後でベットを出るそれに似て、概ねそっけないものだが件の女子高生一団も上映中から実に静かなもので、感動に胸を打たれたのかどうかは知る由もないが、言葉交わす事なく出口に急いでいた。

 そして俺はと言えば劇場から脇目も触れず駅に走り、駅から家に向かってひた走り、夕刻なれど缶ビールを開けて「チキショー」とひとり呟いて「アイドル映画で思いっきりヤラれた」余韻を噛みしめた。
 それは学校や公園で無邪気に苛められた子供が、必至に涙を堪えて家まで辿り着いた所でようやく泣き出すの図にどこか似ている? 映画館ならではの時間差「チキショー」感は、ビデオ鑑賞では絶対に味わえないものだ。良いトシしてアイドル映画を観に行った時間差「チキショー」感をたっぷり味わいながら、親の敵の様に煽ったビールはやけに苦く、フテ寝から醒めれば痛飲のお陰で頭はガンガン。この原稿を書きながら、結局メンバーの顔と名前は、以前と変わらず全く一致していな事に気付いた阪本でした。チキショ〜!!

============<作品データ>============
『ピンチランナー』
出演:中澤裕子/安倍なつみ/飯田圭織/保田圭/矢口真里/市井紗耶香/後藤真希/押尾学/高田宏太郎/美勇士/北川弘美/光浦靖子/近藤芳正/斎藤洋介/北村総一朗/松坂慶子 ほか

製作:アップフロントエージェンシー/東映/テレビ東京/テレビ東京ミュージック/電通/吉本興業
企画:山崎直樹(アップフロントエージェンシー)/岡田裕介(東映)/宮川鑛一(テレビ東京)
原案:萩原史子
脚本:斎藤葉子/益川知実
脚本協力:山田政史/桂樹芙莉/プラネット・ラボ
プロデューサー:佐藤尚(アップフロントエージェンシー)/冨永理生子(東映)/福田一平(テレビ東京)
音楽:前嶋康明
主題歌 「ナチュラル〜抱きしめてこのままで〜」
作詞/まこと・つんく 作曲/根本 要
唄/STARDUST REVUE with 翔子(zetima)
特別協力:「ひたちなか全国少女駅伝大会」実行委員会
製作協力:東映東京撮影所

監督:那須博之

全国東映系にて公開中


構成・文/阪本 悠



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