萬年テレビ亭
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食わず嫌いも困るけれど、屋台ですくった金魚諸君、食べ過ぎもいかん。
(内訳 1回100円で10匹、毎月餌代1000円也)


第22食 ●私が愛する『真・食わず嫌い王(キング)』決定!●


 日々ネタ枯れの恐怖と隣り合わせの『テレビ丼』も、お陰様で毎週月曜更新にパワーアップして早一ヶ月が過ぎました。前回前々回と『テレビな映画』ネタが続いたので、素材をテレビに戻さねば… と、取り出した『特選素材』は 第19食『どっちの料理ショー』で予告させて戴いた『とんねるずのみなさんのおかげでした』の人気コーナー『新・食わず嫌い王決定戦』だぁ!
「だぁ!」と意気込むその訳は、昨年9月にこの連載が始まってからず〜っと「いつ書こうか!」と機会を伺っていたのだが、最初に感銘を受けた勝俣州和『王(キング)』のオンエアが3年前だった事から、俺の中での次なる『王』が登場するまでじっと機会を伺っていたのだが、5月4日オンエアの玉置浩二『王』の登場でやっとチャンスが巡って来たと言う訳なのだ。

 御存知ない方の為にルールを御説明すると、石橋貴明氏と木梨憲武氏が率いる2名のゲストが、4品の大好物を食しつつ1品だけ隠された嫌いなメニューを当てるというもの。その実嫌いな一品は、食べて嫌いになったものなので『食わず嫌い』とのタイトルは正しくないが、95年の『おかげです』時代から貫き通しているので世間的には問題ナシと黙認されているようだ。
 テレビ誌で玉置浩二氏の名前を発見した時から俺の中には勝俣氏を越える新たなる『王』登場の予感を感じ取ったが、その訳は以前にコンサート風景のVTRで観た時の事。
玉置さ〜ん』と会場からの声に『お客さ〜ん』と応えるセンスに「この人はただ者ではない」と踏んだ事に始まり、古くは小林薫氏とコンビを組んだドラマ『キツイ奴ら』や、ビートたけし岸辺一徳筒井道隆氏と曲者揃いの映画『教祖誕生』で好演。最近のドラマでは『コーチ!』で珍品『鯖カレー』を開発する役どころを難無くこなす役者の一面も持つ玉置氏は、俺に取っては常に“何かやらかしそうな油断の出来ない存在”なのだ。
 この日も登場から終始ニタニタしどうしで、石橋氏の説明では師匠に当たる井上揚水氏譲りのかなりの変人らしく、その変人ッぷりは割愛させて戴くとして、玉置氏の大好物は、もずく酢、なすの漬け物、さざえの壺焼き(焼き物)、しいたけの煮物、と本人曰く『物』でまとめたと云う拘り様には頭が下がる。
 対する腹話術の若きホープ・いっこく堂氏は、ボルシチ、豚の角煮、ひつまぶし、杏仁豆腐という、ロシア・沖縄・名古屋・中国と地方色豊かな? 取り合わせだが、両手脇に携えた腹話術の人形を撤収された途端の、その緊張ッぷりは予想を遙かに上回った。お三方が気遣って人形一体を呼び戻しても緊張は解ける事なく… 見ているこちらが気の毒になる思いだが、トーク等の優劣と勝負が関係しないのもこのコーナーの面白い所だ。
 そんなこんなで『しいたけvsボルシチ』『なす漬けvsひつまぶし』と食べ進んで、3品目の『もずく酢』に挑む玉置氏は、いきなりダイエー監督の物真似を始めた時は、「おぃや〜 何か怪しいぞい」と思いつつも、存在そのものが挙動不審と言っても過言ではない程怪しい人なので判断尽きかねる所だ。
 しかしあまりにも本人が楽しそうに真似る様に触発されたのか芸人の血が騒ぐのか、以降、
・木梨 → ベイスターズの駒田選手
・いっこく堂:1 → 野球解説の西本幸雄
・石橋 → 作家・五味康祐
・玉置:2 → 五木ひろし版“ワインレッドの心”
・いっこく堂:2 → 円楽師匠
 と物真似ネタが続いた事には驚いた。これが何とも飲み屋の座敷席4人テーブルで悪ノリしたオヤジ状態レベルで結構笑えない事もなかったが、円楽師匠を受けて玉置氏が披露した『アカペラ笑点のテーマ』には、度肝を抜かれてしまった! コンサートで唐突に唄い始めて客を唖然とさせる芸だというのだが、
『パッパッパパラリラ、パッふぁ〜! クァアファファクワクワ…♪』と身を乗り出しての各パートの楽器をアカペラで真似る珍芸に、石橋氏はひっくり返ってしまい、いっこく堂氏は絶句。「酒も飲んでねぇのに」と大喜びの木梨氏に、「長いから…」とニタニタしながらリードギターに至る所が絶品! と小出しに披露する玉置氏は、
「いいから全部やって下さい」と仕事を忘れてノリノリ状態の木梨憲武37歳。のオーダーに応えて、最初から途中の気の抜けたラッパの『ぱふぅ!』まで一気に披露!、
「いやいや凄いモノを観せて戴いた…」とテレビの前で自失茫然の俺は、齢を重ねたいぶし銀の如き職人芸を観た思いだったが稚拙な文章では表現不可能の為、興味のある方はコンサートに足を運んで御確認下さい。

 と言う訳で、4品食べ終わっての『筆入れ』で互いの嫌いな一品を指定するのだが、一回目は『ひつまぶしvsしいたけの煮物』で両者ハズレ。次の『ボルシチvsもずく酢』で物真似合戦で凄い芸を披露した健闘虚しく玉置氏は破れてしまった。
 が、俺にとっては勝ち負けよりも、ここから先の『喰わず嫌い』に対するコメントが大切な訳で、これがつまらなければ申し訳ないが『ダメな人』の烙印を押させて戴いている。人間性は否定しないが、『喰わず嫌い王』に出演するからには、若いタレントさんは目をつぶるとしても良い大人で理由がつまらない人は『ダメな人』。玉置氏の事だから『給食で」などと気の抜けた事は言わないだろうとは思っていたが、
「海のものが酢に混ざるのがさぁ… だってイヤじゃない? 海が酢だった大変だもんね?」と意味不明ともその通りとも取れる、人柄の滲み出たコメントで見事に決めて下さった。
 とんねるずのおふたりやスタジオの反応はイマイチだったが、海の水が酢だったら、ひと夏限りの恋も生まれ難いかも知れず、青春の苦悩を海に向かって叫ぶ事もなく、森田健作氏も胴着で浜辺を走らなかったかも知れない。恐るべし玉置浩二42歳! だてに頭髪に白いものを混じらせてはいない。我が心のふたりめ『真・食わず嫌い王(キング)』登場に大満足しつつ、このコーナーに殆どの時間を費やして番組は終わった。
 と満足してはいられない。俺がこの番組を観続けるきっかけを作って下さった偉大なひとり目の『真・食わず嫌い王(キング)』勝俣州和氏の『バナナ』にまつわるエピソードを紹介せねば、また機会を逸してしまうではないか!
 8人兄弟の勝俣氏は、幼い日に兄弟人数分のバナナの房を戴いて大喜び。早速喜んで食べる兄弟らを密かにせせら笑って、あとで見せびらかして食べてやるんだ! と心に決めた勝俣少年は、机の引き出しにバナナをそっと隠しておいた。が、そこはそれ子供の事。日々一刻楽しい事が目白押し状態ですっかりバナナの事は忘れてしまい… 思い出した時には、みせびらかして食べる次期を完全に逸していたのだ。慌てた勝俣少年は、兄弟に見られて騒ぎになる事を恐れ、電気も付けずこっそりバナナにかぶりついたその時! 『じゃりっ』とした食感に、「あれ? バナナって種があったけか?」と口から吐き出して電気をつけると、そこにはビッシリとハエ(?)の卵が産み付けられていたのでした…。

 97年11月13日のこの放送はビデオは撮っていないのでウロ覚えだが、涙を流しながら語られた強烈なエピソードは、単なる貧乏ネタを越えた忘れ様にも忘れ難い、俺の中では不動のベスト1。あまりにショッキングな内容だったので恐らく大筋に間違いはないだろう。
 そんな辛い経験を乗り越えた勝俣州和大王の更なるご活躍を日々心からお祈り申し上げると同時に、これを越える壮絶なエピソードを待ちつつ、俺は今も『新・食わず嫌い王決定戦』を見守り続けている。

============<作品データ>============
『とんねるずのみなさんのおかげでした』(毎週木曜 ヨル9:00〜9:54 フジ系)
出演:とんねるず/野猿 ほか

製作:アップフロントエージェンシー/東映/テレビ東京/テレビ東京ミュージック/電通/吉本興業
企画:山崎直樹(アップフロントエージェンシー)/岡田裕介(東映)/宮川鑛一(テレビ東京)
原案:萩原史子
脚本:斎藤葉子/益川知実
脚本協力:山田政史/桂樹芙莉/プラネット・ラボ
プロデューサー:佐藤尚(アップフロントエージェンシー)/冨永理生子(東映)/福田一平(テレビ東京)
音楽:前嶋康明
主題歌 「ナチュラル〜抱きしめてこのままで〜」
作詞/まこと・つんく 作曲/根本 要
唄/STARDUST REVUE with 翔子(zetima)
特別協力:「ひたちなか全国少女駅伝大会」実行委員会
製作協力:東映東京撮影所

監督:那須博之

全国東映系にて公開中


構成・文/阪本 悠



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