萬年テレビ亭
隔週月曜更新
テレビ丼
毎週月曜更新・連ドラ定食
「トリック」 
毎週水曜更新・連ドラ定食
「バスストップ」 「花村大介」
毎週金曜更新・連ドラ定食
「愛をください」 「合い言葉は勇気」



いろいろな味わいと多彩なカラーで今後も笑わせて下さい。(W・M談)


第25食 ●“1”はどうした? 『とんねるずのこんとinなえば2』●


 第22食で『新・喰わず嫌い王決定戦』について熱く語らせて戴いたが、『とんねるずのみなさんのおかげでした』を一応毎週チェックしている俺に、ある日吉報が舞い込んだ。
 苗場プリンスホテルで10年間毎年行われているコントライブの集大成が、2巻のビデオ『とんねるずのこんとinなえば』として発売されと聞いて、貴重な青春時代を日本テレビの『お笑いスター誕生』チェックに費やした日々を懐かしく思い出してしまい、久々にレンタルビデオ店に駆け込んだ。が、とんねるず初のコントビデオだからなのか、新作ビデオの宿命なのが、延々貸し出し中の札がかかりッ放し! 足繁く通った末にやっと『2』をモノ出来た訳で、わくわくしながら缶ビール片手にテレビの前であぐらをかかせて戴いた。


 さしたる装飾もない真っ暗なステージを後方から捉えたカメラが、客席のざわめきをも拾う映像は、かつて少しだけ小劇団の制作を手伝った事がある身としては、カメラ一台据え置きで撮った舞台ビデオを観る想いで、懐かしさのボルテージは急上昇。暗転明けで会場と同じと思われる椅子2脚のみが置かれたのみのステージにハイジャック役の石橋貴明氏と木梨則武氏が揃って登場すると客席から沸き上がる歓声や拍手も付け足しではない模様で、「おぉ、まさしく俺は今、ライブビデオを観ているぞ!」と感動さえ覚えてしまった。
 凝った編集もなくふたりの動きを的確に捉えるカメラワークも実に見易く、立ったり座ったりしながら喜々としてハイジャック犯を演じるとんねるずを観ていると、改めて石橋氏のガタイの良さに驚いてしまった。
 歌って踊る野猿に殆ど興味のない俺は、前出の『新・喰わず嫌い王決定戦』や、『ほんとうのうたばん』、金曜深夜の『第四学区』(フジ)などで、座っている石橋氏しか観ていない事を再認識して、ステージ狭しと動き回るとんねるずを久々に観た事を再確認して胸を熱くした次第だ。

『革命へようこそ』と題された1本目のコントは、95年の初演。ネタの方は、離陸早々のパリ行き旅客機を乗っ取ったふたりが、人質となった乗客に向かって説明を始めるうちに、何故かスチュワーデスになってしまいつつ、何やかんやのアクシデントに見舞われて… というもの。ファーストクラスには『出たモノ勝負』のロケに向かうオヒョイこと藤村俊二氏が乗っているとの設定で、忘れた頃に各々「オヒョイよぉ〜」と突っ込むさまには大いに笑かせて戴いた。が… ラストのオチには『?』との感が否めないながら、20分近い大作? が終了。
 古館伊知郎氏のナレーションが臨場感を盛り上げる『猪木兄弟の結婚式』は翌96年初演の作品。1巻2巻のビデオパッケージを飾る写真のネタで、10数分の小作ながら双子の弟役を熱演する木梨氏が、前作と全くキャラが違うワイルドさで良い味を出している。
 ネタにとんねるずらしいサラッとしたヒネリを効かせながらも、身体を使ったアドリブとドタバタの続出は理屈抜きで単純に笑える。こちらもオチに『??』としながらも、インタビューで石橋氏が、高校3年でアマチュアテレビデビュー当時からの20年ネタだと自信満々に語る通りに充分楽しめた。
『お笑い界のニューウェーブ』は遡って93年初演の20分近い大作で、デビューしたての新人コンビ『うっかりびっくり』が本番を前のネタ合わせに悪戦苦闘するというオーソドックスネタ。すぐに怒る“うっかり”こと石橋氏が、気が弱くてロクにネタも振れない“びっくり”こと木梨氏に「怒るなよ〜」と言われると必ず「わかったよぉ〜」と折れるお約束が、殺伐とした今日この頃、乾いた心にそこはかとない癒しを与えてくれる。
 すぐに切れる昨今の若者たちには、この姿勢を是非とも見習って精進を重ね、高納税額者を目指して戴きたいものだ。

 しかしこのコントもオチが『???』と思った俺は、『?』が3つ重なってようやく気がついた。
 このビデオに収められているとんねるずのコントは全て、オチうんぬん以前のプロセスで笑わせるだけ笑わせて“落とす”のではなく、『失礼しました〜』『お後が宜しいようで〜』と“閉める”ものだったのだ。
 ウッチャンナンチャンの台頭あたりからか、演劇的コントに興味が惹かれてしまい、コントの価値を“それなりに納得出来るオチ”や、それと対局の“全く不条理なオチ”で推し量るようになっていた自分としては、この“閉める”タイプのコントには暫しお目にかかっていなかった気がして、目からウロコが落ちる思いだった。
 だが、そんなとんねるずのコントビデオの最後を飾る出し物は、ボーナストラックと表記された40分の大作、98年初演の『毒コブラ座』。
 これはネタではなく限りなく芝居に近い作品で、石橋さん演じる人形劇団『毒コブラ座』の“人形長”と、木梨さん演じるたったひとりになってしまった女性座員との、涙、涙のラブストーリーだ。
 この手の笑って泣けるドラマや芝居、映画はこっぱずかしくって苦手であり、コントと芝居が歩み寄る風潮には大いに疑問を感じている俺だが、カツラを被った木梨さんの健気な女性像には、気がつけばぞっこん惚れてしまった。
 お嫁さんにしたいタレントナンバーワンと言って過言ではない程の良い女っぷりに脱帽しつつ、古くは日テレの『火の用心』や、フジの『今夜、世界の片隅で』『小市民ケーン』石橋木梨氏よりも、何十倍も魅力的に見えたこの『毒コブラ座』を、なんだかんだ言いながら素直に楽しませて戴いた。


 そんなこんなで缶ビール片手にサックリ『こんとinなえば2』を見終わって思う事はと言えば、やはり「テレビでもこんなコントをサックリ披露して欲しいものよの〜」に他ならない。
『〜おかげでした』で以前にやっていたコント『あるある女』も最近ではとんとお目にかからないし、現在、番組の終わり近くにコーナー展開している『のりたケーブルテレビ』も、野猿メンバーを絡めた木梨さんの独り舞台。
 大竹まこときたろう斉木しげるのお三方も、シティ・ボーイズとして年に一度のコントライブを続けておられるし、とんねるずも年に一度、苗場だけのお楽しみとのポリシーは解るのだが、レギュラー番組を多数抱えて発表の場があるだけに、たまにでも良いからコントで汗を流す姿をテレビで拝見したいものだ。
 その昔フジの深夜番組『冗談画報』では、小劇場や若手、ベテラン織り交ぜたコントやピン芸が毎週たのしめた訳で、現在は金曜深夜の通称『なみはや』=『新しい波』(2:15〜2:45)で、新人“のみ”の芸を見る事が出来る。が、そんな若手芸人さんたちも、アッという間にメジャー進出してしまえば、素人とも仕込みともつかない人々をいじったりいじられたりや、クイズバラエティ等で無理矢理ボケをかます要員の立場に押し上げられしまうのが現状だ。
 ブームが去ったと言えばそれまでやも知れぬ、今更コントネタ披露番組では視聴率が取れないと作り手側が思ってしまえばそれまでなのだが、今回『こんとinなえば2』を観て、石橋木梨両氏が一番カッコ良く見えるパートナーは、石橋木梨両氏に他ならず、とんねるずの魅力は、やはりコントで一番引き出される事を再確認させて戴いた次第だ。


 と原稿を書きつつ、アップの日までに『こんとinなえば1』を観て加筆しようとの目論みは遂に成らず、『貸し出し中』の黄色い札はかかったままだった。
「だったらビデオ買えばいいじゃねぇかよぉ!」と『うっかりびっくり』の“うっかり”に扮する石橋氏や、“猪木弟”の木梨氏にドヤされそうなので、本日はこの辺で『お後が宜しいようで…』。

============<ビデオデータ>============

『とんねるずのこんとinなえば2』(6/30発売・上下巻各5,040円・税込)

出演:とんねるず(石橋貴明・木梨則武)
声の出演:徳光和夫/古館伊知郎/三宅正治・長坂拾夫(フジテレビ)
企画・制作:市川兼司/関口正勝/清水和雄/大下光博/荒木信泰/塩川智章
構成演出:吉野晃章/菊原共基/石原道好/小川浩之
監修:秋元康
構成・演出:港浩一(フジテレビ)
ビデオ企画・発売:アライバル


構成・文/阪本 悠



日本文芸社のトップページへ萬年テレビ亭テレビ丼バックナンバーメールでの質問・お問い合わせ