「午後3時すぎの潮干狩り」
 どうしたって30代になると、異性と出会うチャンスはめっきり減ってしまう。周囲を見渡してみても、同世代の男性はみんな既婚者ばかり。たまに新しい出会いがあっても、左手の薬指に輝く指輪に気付いてがっかりさせられることも少なくない。前に雑誌かなにかで、「30過ぎて結婚相手を探すのは、『午後3時すぎの潮干狩り』のようなものだ」というコメントを読んで、なかなかうまいことを言うなぁと感心した覚えがある。すでにめぼしいものはほとんど取られていて、ロクなものが残っていない…という意味あいなのだそうだが、このことは30代シングルならすでに身をもって実感しているはずだ。それでも出会いを求めないかぎり、結婚への道は開かれないのだとしたら、みんなはどこに出会いの場を求めているんだろう。ちゃんとそれなりに努力をしているのかどうか、とても気になる。
 ところがアンケ−トでは、「結婚相手を探す努力をしていない」と答えた人が男女とも80%以上というトホホな結果に。具体的な出会いの場としては、「友達の紹介」や最近30代の間でひそかなブ−ムといわれる「合コン」が圧倒的なのだが、それが直接結婚に結び付くのか、となるとなかなか難しいものがあるようだ。


Q1.出会いの場として体験したことがあるのは?
「誘われた合コンは必ず出席してるけど、コレ!と思える人はめったにいない。たいていはロクに会話もできないような、女慣れしていないタイプばっかり。『これじゃあ結婚できるわけないじゃん!』って自分のことは棚に上げてつい思ってしまう」(35歳/アパレル勤務)

 実は私もつい最近、久々に合コンに参加してみたのだが、まさにこのコメントに近い光景を目の当たりにしてしまった。(もちろん収穫はなし!)。自分の好みはともかく、それなりにその場を盛り上げるようとしていた女性陣に比べ、男性陣は自分からは話題すら提供できないような感じで、なかにはやたらカタクナで、何を聞いても一言しか返事を返さない人もいたほどだ。その帰り道、私たち女性陣は「30過ぎてるんだからさぁ、せめてその場だけでも楽しく飲めるような会話ができなくてどうする!」と思いっきり息をまいていたのだ。しかし、その様子をやはり30代シングルの男友達に話したところ、「それって、オマエらが元気よすぎて、思いっきり引かれてたんじゃないの?」との鋭いつっこみが入り、おもわずギョッとしてしまった。そういえば私の隣にいた友人は、目の前に座っていたかなり太めの男性に向かって、「あなたはあと最低5キロはやせましょうねっ!」と優しく微笑みながらも、きっぱりと言い放っていたっけ。たしかにあまり積極的とはいえない彼らには、私たちは元気すぎたのかもしれない。でもだからといって、女性陣の言い分も決してまちがってはいないところが、何ともやっかいだ。奇しくも、30代シングルが新しい出会いをモノにすることの難しさをマジマジと痛感させられた一夜だった。
Q2.あなたは結婚相手を探すための
努力を何かしていますか?
はい:18%、いいえ:82%(男性)
はい:4%、いいえ:89%、
無記入:7%(女性)




「このまま一生一人でもいいですか?」

 今のところはまだ、それほど切実でない30代シングルたちも、将来のことを考えると内心穏やかではいられなくなるという人は多いと思う。現実問題として、住まいのことや老後のことなど、イヤでも考えなくてはならないことは山のようにあるのだから、それを思って不安になってしまうのも当然のこと。とくに女性は、男性よりも年齢的なプレッシャ−が根強いと見え、けっこう深刻に受け止めているようだ。「このまま一生一人でもいいですか?」という問いにも、40%の女性が「死んでもイヤだ」と答えている。
「母の友達はみんな、すでに孫がいておばあちゃんになっている人が多く、どうも話が合わないらしい。自分だけでなく、親にまで形見の狭い思いをさせているのかと思うとよけいツラくなる。こんなことなら結婚はともかく、20代の頃に1人くらい産んでおけばよかった」(34歳/デザイン事務所勤務)

 いくらマル高が35歳になり、40歳での出産も珍しくなくなったとはいえ、どうしたって女性には出産のタイムリミットという大問題がついてまわってくる。実際、高年齢出産はそれほどラクではないようだし、どうしても子供がほしいなら早いに越したことはないはずなのだ。おそらく30代シングル女性が一番ジレンマを感じるのがここなのだろう。私も常々、「子供はいらない!」と腹をくくれたらどんなに気がラクだろうと思っている。それができないからこそ、なんとなくあせってしまうのだ。この問題さえなければ、「いくつになったっていい人が現れるまでは絶対に待つ!」と堂々と開き直れるのに。
Q3.親からのプレッシャーはありますか?
はい:57%、いいえ:40%、無記入:3%(男性)
はい:33%、いいえ:60%、無記入:7%(女性)


Q4.あなたはこのまま一生シングルでも
いいと思いますか?
死んでもイヤだ:21%、仕方ない:25%、
今はいいと思うが先のことはわからない:54%(男性)
死んでもイヤだ:41%、仕方ない:11%、
今はいいと思うが先のことはわからない:37%、
その他:4%、無記入:7%(女性)
 かたや出産問題で悩む必要のない男性たちも、一生シングルで過ごすことにはそれなりに抵抗感があるようだ。「年をとったときに1人では大変」「一生1人では生きていけない」などのコメントが多いところを見ると、今はともかくこれから先もずっと一人で過ごす覚悟はできていないように見受けられる。かといって「先のことを考えて妥協してでも何がなんでも結婚する!」という境地にはなかなか立てない。実体のつかめない不安を抱えているところは、男女共に変わりはないのかもしれない。
 でも実は、この不安こそがシングル脱出に向かって一歩前に踏み出す、唯一の原動力になるのではないだろうか。もちろん結婚することだけが幸せとは限らないが、少なくともこの不安を乗り越えるために、あれこれ考えることは自分をみつめる良い機会にはなるはずだ。自分ととことん向き合って、自分で答えを出すことはとても大切なことだと思う。それはけっこうキツイ作業だけれど、それをしないで逃げてばかりいたのでは、私たちはいつまでたっても今いる場所から動けないのではないだろうか。
 早々と結婚していった友達たちは、「結婚は勢いだ」とよく口にする。それが本当だとしたら、すでにその勢いが乏しくなってきている30代シングルの私たちは、その不足分を何で埋めればいいのだろう。たぶんそれは、自分をしっかりみつめた人だけが出すことができるオリジナルの法則なのではないかと思うのだ。

「結婚という波」

 この原稿を書くにあたり、いろんな30代シングルたちと話をしてみてわかったのは、みんな思ったよりもずっと、シングルでいることを意識している、ということだ。それはこのアンケ−トをお願いしたアチコチで、「内容がシビアすぎて答えるのがシンドイ!」とのブ−イングの声が多かったことが何よりの証拠といえるだろう。同じ立場である私自身が「これくらいなら問題ないだろう」と考えて作ったものだったのに、いざ渡して見たら協力を拒否されるシ−ンも少なくなかったのだ。傍から見ると、あせりなど微塵も感じられない彼らが、内心はこの程度のアンケ−トさえ気に障るほど揺れ動いていたなんて……。このことはけっこうビックリだった。
 でもそれならそうで、もっと正直になってその気持ちを表に出してもいいのでは?と思ってしまう。別に「結婚したい!」と思うことじたいは、ちっともカッコ悪いことではないんだから、意思表示をしたほうが周囲の人たちも協力してくれたり、いろいろと出会いのチャンスも広がるのではないだろうか。もっと自分の気持ちに素直になって、それをそのまま表現するくらいのしなやかな強さを身に付けること。私たち30代シングルがまもなく訪れる21世紀を、ひとりでなくパ−トナ−と迎えるための幸せのカギはたぶんここにあるような気がする。
 それからもうひとつ。この連載のスタ−トで書いた私自身のシングルでいる理由も、この原稿を書き続けている過程で、はっきりと答えがみつけることができた。それは「私はシングルでいることを自分自身で選んできた」というものだ。たぶん今までの私には結婚というものが必要ではなかったのだろう。「結婚はするもの」という漠然とした定説はあったものの、誰とつきあっても具体的には結婚を考えなかったことが何よりの証拠。今回いろいろな角度から結婚について考えてみて、そのことが明らかにわかった。友達たちには「そんな当たり前なこと、今さら何を言っているんだぁ!?」と怒られそうだが、自分の中ではこれこそやっとたどり着いた尊い真実なのだ。
 しかもそのことをはっきりと自覚した今は、シングルでいることの後ろめたさをかなり減らすことさえできた。もちろん「できれば早く結婚したい」という気持ちに変わりはないけれど、理由がわかったことでかなり気持ちが落ち着いたように思う。むしろ今までとはちがうリアルな視点で、結婚というものが見えてきたような気さえしている。
 人生には流れというものがある、と私は常々思っている。その流れにあるものなら、必ずたどり着くし、逆に流れにないものは自然に淘汰されてしまうはずなのだと。だから今は大きな気持ちで、いつか訪れるかもしれない「結婚という波」を楽しみにしていたいと思う。その波がきたときにはいつでも乗り出せるような、ほんの少しの勇気だけは用意しておいて。


取材・文/kako
撮影/ハヤシヒロシ

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