西一番中央通りにある酒屋が経営する、いわゆるジャパニーズな古典的立ち飲み屋である。店内に入ると、開店直後の午後1時だというのに、既に客は二人いた。二人とも70歳くらいの男性。一人はコップ酒にサキイカが肴、もうひとりは、コップ酒を飲み干し、2杯目を何やら指差して注文する。40歳くらいの御主人が黙って一升瓶から赤い酒をなみなみと注ぐ。クイッとその赤い液体を一口飲んだ男性は「いやあ、口当たりが良くてうまいねえ…」と小さくつぶやく。あまりにうまそうなので、僕も同じものを注文する。御主人は「昔の赤玉ポートワインみたいなもんですよ」と、ポーカーフェイスでおっしゃる。ほんとだ、懐かしい味、故郷(くに)のお袋がこれが好きだったことを思い出す。すいませんねえ、いつまでも放蕩息子で…あらら、ついノスタルジックになってしまった。でも、レトロなのはその赤ぶどう酒(240円)ばかりではなく、店内の様子も見なれた光景ではないが、コンクリートの三和土(タタキ)にL字型のカウンター、駄菓子屋風の硝子の入れ物などなかなか雰囲気がある。「創業は東京オリンピックの前年だった」と御主人。つまり1963年(昭和33年)である。うーん、そう言われれば、店内は昭和30年代から時の止まったままになっているようだ。
|  |  |